「コード・ブルー」作り手が語る医療ドラマの裏 新ドラマ「トップナイフ」が追求するリアル
新村:僕は医療監修をするにあたって、まず原作や脚本を読み、制作陣がドラマというかたちで何を描きたいのかをしっかり抽出して理解するようにしています。テレビドラマはエンターテインメントの世界ですから、面白い話にしたい、魅力的に見せたいという意向もありますよね。それを汲みとりながら、現実に苦しんでいる患者さんの気持ちを冒涜しない描き方を考えていくのが僕の仕事だろうと。
林:「コード・ブルー」で題材にした病気を患っている人からお手紙をいただいたことがあります。それから責任感が生まれました。ドラマの中で誰かが亡くなるにしても、面白さを優先したくない。人物の生死をきっちり描きたい、と。
新村:そういう熱意を俳優さんから感じることもありますよ。撮影現場で技術指導をしていると、いろんなタイプの人がいるんだなと驚かされる。ある俳優さんは「メスはどうやって動かすんですか?」と型から入って、私の実演をよく観察して盗んでいました。また別の俳優さんは「ドクターはどういう気持ちで手術に臨むんですか?」と、医師の内面から演技をつかんでいった。技術と心情、どちらもオペシーンを成立させるために大切なアプローチですよね。私もドクター対ドクターだと思って、丁寧に説明します。
手術シーンはシナリオで細かく書き込まない
林:手術シーンはシナリオで細かく書き込まないんです。基本的にはセリフを指示するものなので。だからシナリオ上は「メスで腹部を切る」というたった1行だったりするけど、それを映像にするとき、演じる人の動きひとつで迫真性がぐんと変わってくる。
新村:印象的だったのは、オペの背景を理解しようとした俳優さんです。頭の中の太い血管を潰して出血を止めるというシーンでした。「これはどういう手術なんですか? シナリオだと、手術後に患者さんは植物状態になっていますよね。それがわかっていて血管を潰すんですか? もう治らないんですか?」と聞かれました。
「たしかに、この処置をすることで患者さんを植物状態にしてしまいます。でもこの血管はもう壊れていて、血管を潰さなければ亡くなってしまうんです。医師はとにかく患者さんを死なせないという選択をオペ中にする。そういう描写ですね」と説明したら、「やるせない手術ですね」とおっしゃって。そこから表情や所作をつくっていって、奥深い演技をされていました。役者魂ってすごいですね。