「コード・ブルー」作り手が語る医療ドラマの裏 新ドラマ「トップナイフ」が追求するリアル
林:医療ドラマはディテールが大事です。オペの手つきや医療器具は専門家じゃないと、リアルかどうか見抜けないかもしれないけど、全体を支えているのは「それっぽさ」だと思うんです。以前、実際の手術を見学させてもらいました。開頭手術だし、血がいっぱいあふれ出てるし、僕はすごく怖かった。でももっと衝撃を受けたのは、医師たちが淡々と仕事していること。
新村:ええ。頭の皮膚を切って頭蓋骨を外して、脳に到達するまでは、まるで大工仕事なんですよ。道具を使って着々と進めていきます。でも、いざ脳にさしかかったら、顕微鏡をのぞきながら、ものすごい集中力によってミリ単位で動いていく。この緊張と緩和のギャップは凄まじいものがありますよね。
リアリティーがないと視聴者はしらけてしまう
林:考えてみたら当然だけど、それが医師の日常で、1日に何件もオペをしていて。だから僕は、手術室ってけっこう寒いんだなとか、頭を開けている間は世間話をしてるんだなとか、そういう空気感をリアリティーとして持ち帰りました。その空気がないと視聴者はしらけてしまう。
新村:ドラマ「トップナイフ」は「コード・ブルー」とはまた違ったリアルを追求されていますね。「大がかりな手術器具もしっかり揃えます」とプロデューサーがおっしゃっていて、意気込みを感じました。
とうとう脳外科が舞台ですね。初めて会った頃から、林さんは脳外科医というモチーフを熟成されているなと思っていたんです。
林:ばれていましたか。新村先生に脳外科医の話をよく聞いていましたもんね。あれから脳科学の本を読んだりして、脳の不思議さに引きこまれました。原作小説の『トップナイフ』に書いたとおり、脳はまさに「未開の地」で、解明されていないことが多い。逆に言うと、いくらでも想像を膨らますことができる。ドラマの種がたくさん埋まっていたんです。
新村:カプグラ妄想、コタールシンドローム、サヴァン症候群、エイリアンハンド、となかなかレアな疾患をきちんと科学的に理解したうえで、その症状によって患者さんや医師たちの人間的なドラマを動かしていく。医学のほうからストーリーに入っていく発想には「こうきたか!」と、そして病理と人生を矛盾なく描けたことに「さすが!」と驚きました。医師の私からしても、『トップナイフ』は楽しい小説ですよ。