米排除「孔子学院」、日本で蠢く中国の宣伝工作 米中貿易戦争の裏側で「シャープパワー」外交
米国がいう中国が行使しているシャープパワーとは、孔子学院のほかにあらゆる活動を含みます。チャイナ・デイリー社が発行する「チャイナ・ウォッチ」という広告や、中国国営テレビの中国中央電視台(CCTV)の米国向け放送の「CCTVアメリカ」などが、「世論工作」や「プロパガンダ」などと批判されています。
これらはすべて、従来の中国の代表的なパブリック・ディプロマシーの手法として、かねてより中国が展開している取り組みです。しかし、米国は、中国の経済活動や軍事行動が米国の国益を脅かすのではないかという危機感を募らせ、この数年のうちに対応を一変させたのです。
軍事衝突を伴わない冷戦が構造化
そもそも、中国が米国に対して働きかけを強めていった目的は、米国社会において自国のイメージアップやプレゼンスの拡大を図り、中国に対する敵対的な意識を持たせないようにすることです。
その意味において、初めのうちは中国の取り組みは順調かのように見えました。孔子学院はもちろん、多彩なメディア戦略は米国で話題となりました。CCTVアメリカは、ニュースキャスターや番組構成など、一見するとまるで米国発のニュース番組であるかのようなつくりになっており、また「チャイナ・ウォッチ」も東海岸から西海岸までの有力紙に折り込まれるようになりました。
首都ワシントンの有識者やメディア関係者もその勢いは注目しており、こうした中国の取り組みに一定の評価を示す声も聞かれました。
しかし、中国の試みは、シャープパワーとして排除され、いよいよ行き詰まり始めています。米国の態度の変化は劇的で、その結果、米中間で繰り広げられる圧力や牽制などの対立行動が貿易戦争と呼ばれる状況に発展し、さらに米国の中国に対する圧力は軍事・安全保障問題にも及んでいます。米中間の攻防の領域は、ソフトパワーの領域から、ハードパワーの領域に移行しつつあるのです。
米国は、法的手段を用いて電子デバイスなどの国際市場を二分化する動きを見せ、積極的に台湾防衛に関わる姿勢を示し、さらに、中国は米国と相反する価値観やイデオロギーを持つと警戒感をあらわにしています。まさに、「米中新冷戦」が構造化されようとしているように見受けられるのです。