米排除「孔子学院」、日本で蠢く中国の宣伝工作

米中貿易戦争の裏側で「シャープパワー」外交

さらに、2018年8月に成立した「国防授権法2019」には、ファーウェイに加え、孔子学院を設立する大学への資金支援の停止を求める条項までもが盛り込まれています。

このように、米国では、政府、司法、教育機関等の民間組織まで、国を挙げて孔子学院を名指し批判する事態に発展しているのです。

孔子学院は中国の外交戦略の一部

過去には、米国にも「孔子学院ブーム」がありました。米国内において、中国語を学びたいという意欲ある学生は増大していましたし、経営状態の悪化を見る米国の大学側にとっても、孔子学院設置は中国政府が資金を提供するため、自己負担することなく学生に中国語教育が提供できるというメリットがありました。大学の学生にとっても運営側にとっても、孔子学院は魅力的な事業と受け取られたのです。

こうして、2005年から設置が進み、瞬く間に100校を超える孔子学院が全米のキャンパスに溶け込むようになりました。中国も孔子学院事業に関しては米国での設置をとくに重視したため、実に全世界に設置されている孔子学院の約15%が米国に設置されました。中国の孔子学院総本部によれば、2019年6月時点でも、世界548校のうち、米国には105校が設置されています。一時は約120校にも達していたのです。

ここで、孔子学院と大学側の関係について見ておきましょう。2013年の中国語メディアの報道によれば、2004年から2013年の間に、中国政府は孔子学院の事業に5億ドル(約550億円)の資金を投じています。

別のメディアは、2015年に中国共産党が孔子学院に支出した予算は3億1000万ドルで、2004年から2017年までの間に総額20億ドル以上がつぎ込まれたと報じています。ちなみに、孔子学院1校につき、10万ドル以上の設置費用がかかるとも、運営費は毎年20万ドルを超えるともいわれています。

多くの場合、上述の設置費用や運営費は、中国政府が援助しています。大学側は、自らがほとんど出資することなく、中国語教育を提供できるのですから、こんなにおいしい話はないと考えても仕方がないでしょう。

ところで、この孔子学院、海外における中国語教育機関というだけに運営は民間に任せられているように錯覚しそうですが、そうではありません。中国教育部(日本の文部科学省に相当)傘下の「国家漢語国際推進指導小組弁公室」(漢弁)が運営機関なのです。漢弁は、中国政府の機関ですが、背後で意思決定している組織は中国共産党指導部にあります。

例えば、2018年1月23日に、中国共産党中央全面深化改革領導小組が、『孔子学院の改革発展に関する指導的意見』などの文書を会議で通過させ、「特色ある大国外交」の担い手として「孔子学院建設強化」を打ち出したのは、その明確な表れです。孔子学院の展開は、中国の外交戦略の一部なのです。

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