米排除「孔子学院」、日本で蠢く中国の宣伝工作 米中貿易戦争の裏側で「シャープパワー」外交

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北京・天安門広場にある中国国立博物館前の孔子の銅像。米国で排除されている孔子学院が世界規模では増えている(写真:Imaginechina/時事通信フォト)
米国と中国の貿易交渉は、第1段階の合意に達し、米国は制裁関税の一部引き下げを発表した。中国も相応の対応をとるとしている。ただし、合意内容や今後の交渉については両国の認識にずれがある。米中の対立は緩和されるのか。それとも再度激化するのか。米中関係の今後と、日本が知るべきことについて、『AFTER SHARP POWER:米中新冷戦の幕開け』を上梓した小原凡司氏と桒原響子氏が解説する。

スパイ活動容疑でFBIが捜査

米国と中国の貿易交渉が第1段階の合意に達し、12月に予定されていた追加関税の発動が見送られたとの報道が世界を駆け巡ったとき、中国の新華社があるニュースを流しました。世界各地に設置されている孔子学院の総数が、2019年12月時点で、162カ国の国や地域で計550校に達したというのです。

『AFTER SHARP POWER:米中新冷戦の幕開け』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

孔子学院とは、中国語や中国文化など、いわゆるソフトパワーを使った中国の代表的な外交手法として展開されてきました。2004年に韓国で開学し、日本にも立命館大学をはじめ全国の私立大学に十数校が設置されています。

今回の報道は、孔子学院の展開が「成功している」と伝えたかったのでしょうが、数字だけで「成功」していると惑わされてはいけません。中国との貿易摩擦から始まり、現在もその対立が激しさを増している米国では、この孔子学院が閉鎖の危機に陥っているからです。

孔子学院の活動に対する不信は、2014年ごろから米国内で広まりました。孔子学院の教育内容をめぐって、思想宣伝や政治宣伝ではないかとの懸念が噴出し、「中国政府の政治宣伝機関だ」「学問の自由に反する」といった批判が高まったのです。そして、全米で孔子学院が相次いで閉鎖され、とくにここ2年ほどの間の閉鎖の動きは顕著です。

米国大学教授協会などは、孔子学院を設置する国内の大学に対して、状況に応じて孔子学院との契約を打ち切るよう促しています。そして、ついにはFBIまでもが動き出しているのです。孔子学院を中国共産党による「スパイ活動容疑」で捜査対象としたのです。

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