「ボーナスの差」が組織崩壊を招いた会社の末路 安易な賃金制度導入で社員の不満が爆発した

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ボーナスの金額差が、どうして社員の不満を招いてしまったのでしょうか(写真:CORA/PIXTA)  
冬のボーナス(賞与)が話題になるこの時期。その額に納得している人ははたしてどれくらいいるのでしょうか。会社への賃金制度導入のリスクについて『図解 3ステップでできる 小さな会社の人を育てる「人事評価制度」のつくり方』の著書がある山元浩二氏が、生々しいエピソードとともに解説します。

師走の年末も押し迫ったある日、村田社長(仮名)は業績好調で無事に終わりつつある1年を振り返り、来年に向けた構想にふけっていました。

すると突然、社長室のドアがノックされました。

ドアを開けて入ってきたのは、女性事務社員の山田さん(仮名)でした。彼女は、社長室に突然入ってくるなりこう言いました。

「私の冬の賞与が鈴木さん(仮名)より低かったのですが、なぜでしょうか」

村田社長は即答できませんでした。しかし、思い当たる節はありました。

山田さんは、入社5年目の女性で事務職の正社員。鈴木さんとは同期です。2人には、新入社員時代から夏冬合計8回の賞与で、まったく同じ金額を支給してきました。それを今回は現場のリーダーの報告をもとに判断して、はじめて差をつけたのでした。

「課長の評価をもとに今回から少し差をつけたんだ」

苦し紛れの村田社長の返答は、部下に責任を転嫁しているとも取れる発言でした。

「私は、その評価結果について何も聞いていません」

こう主張する山田さんは、目に涙をにじませ、そのまま社長室を出て行ってしまいました。

社員のためと導入した賃金制度が逆効果に

すぐに村田社長は、山田さんと鈴木さんの賞与の支給金額を確認してみました。すると、驚くことにその差はわずか“100円”だったのです。

この“事件”に危機感を抱いた村田社長は、早速、年明けから「賞与支給基準」の設計に取り組み始めました。なんとか、3カ月でルールをまとめ4月には社員に説明をしたうえで、夏の賞与は新しい基準に基づいて金額を決定し、全社員に支給することができました。

「これで山田さんも納得してくれるだろう。ほかの社員たちもきちんとしたルールに基づいて支給したのでモチベーションも上がるに違いない」村田社長は、自分の取り組みに満足していました。

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