しかし、彼女らと話していて感じるのは、共働きが一般的であるアメリカにおいてさえ、出産・育児とキャリアの両立は、「女性が解決すべき問題」と認識されていることだ。友人のインド系アメリカ人の女子生徒は、夫婦でプライベートエクイティ業界の出身だが、「今後数年で出産・育児することを考えると、私が今までのように夜中まで勤務するプライベートエクイティで働くことは不可能。だから、卒業後は勤務時間の短い業界に転職しようと思っている」と話した。
どれだけ法律で男女平等を保障し、差別を取り締まっても、男女格差はいまだに根強く残っている。
問題を解決すべきなのは、女性か?
世界経済フォーラムが発表した「The Global Gender Gap Report 2013」によると、日本は男女格差で135カ国中105位であった。これは、改善されているどころか、2010年の94位から年々悪化し続けている。酷いレイプ事件などであれほど話題になったインド(101位)より低い。
詳細を見てみると、教育や医療のアクセスにおいてはほとんど格差はないが、経済と政治の分野において、圧倒的に男性優位となっている。女性のトップマネジメントは全体の9%で、国会議員に至っては8%とある。統計データがすべてを物語ることができないのは承知しているが、男女格差については、日本は完全な後進国であると認識する必要がある。
安倍首相は「女性の活躍で経済成長」することを、政策のひとつとして掲げている。少子高齢化が進み、移民受け入れにも消極的なのであれば、これは自明だろう。育児休暇を伸ばす施策や、待機児童を減らす施策を掲げているが、それらはやはり女性が出産・育児の役割を担っているという前提がある気がしてならない。
根本的な問題は、出産・育児とキャリアの両立を、女性が解決すべき課題だと考えるマインドセットそのものにあると思う。出産はともかく、育児に関しては男性がもっと参加すべきだし、ましてや家事に至っては、夫婦共働きであるなら半々が当たり前ではないか。HBSでともに学ぶ、優秀な女性のクラスメートたちを見ていて、しみじみそう思う。
留学前に日本で働いていた頃を振り返ってみると、男性が男女格差問題について真剣に考える機会があまりにも少なかったことを思い出す。留学するまではまったく無知だった私も、今回のニューヨークタイムズの記事で関心を抱き、HBSで昨年発足したManbassador(男女格差問題について話し合う男性主体のグループ)の活動を通じて、男女格差の実態について理解を深めることができた。
長年の風習やマインドセットを変えるのはものすごく大変なことだし、もちろん簡単な解決策があるわけではない。しかし、解決の第一歩は、これが問題であることを、女性だけでなく、男性も理解することだと思う。
将来の日本の成長を担うのは、間違いなく、女性だろう。男女格差は、女性だけでなく、社会全体の課題であるはずなのだ。
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