「つなぎが多いそばはダメ」という大きな勘違い つなぎにはいろいろな役割があった
そば好きの中には、十割そば以外はそばと認めないという人が、少なからずいる。確かにいいそば粉を使い、腕のいい職人が打った十割そばは、誰が食べてもおいしいと感じるだろう。「そばは十割に限る」という意見ももっともだ。
その一方で、町の一般的なそば店や立ち食いそば店ではつなぎを使ったそばが主流で、そば粉の割合は多くて7割。少ないと3割といったものもある。それらを指して「そばではない」と否定する意見もある。
確かに大衆的な価格を維持するため、水増しでつなぎを使う場合もあるのだが、そうというばかりでもない。コスト以外にもそばにつなぎを使う、“積極的”な理由があるのだ。
初心者に違いはわからない
まずは上の写真を見てほしい。提供していただいたのは、人形町にある「誠や」。一方は手打ちの十割そばで、もう一方はやはり手打ちでそば粉を7割使ったそば。同店では2種類のそばを出しているのだが、どちらが十割そばかわかるだろうか。
答えは白くて細いそばが十割で、黒っぽく太い田舎そばが7割。この田舎そばを十割と思った人が多いのではないだろうか。ちなみに取材に同行したそば初心者の編集氏は、2つのそばを食べ比べたうえで、田舎そばが十割だとはっきり答えていた。
「そもそも、そばの香りというのはすごく繊細で弱いんです。田舎そばには殻を入れているので、穀物臭がします。それがそばらしく感じられる要因なんですよ。逆に言うと、殻のはいっていない十割そばの香りは確かに上品なんですが、とても繊細なので、はっきり感じられないこともあるんです」。誠やの店主、福田雅之氏は、十割そばと7割のそばを間違えてしまう理由をこう語る。同氏は、かつてそば製粉会社の大手、松屋製粉に務めていて、そば粉について深い知識を持つ人物だ。
つなぎの小麦粉が入っているからといって、そばらしさが失われるというわけではないのだ。
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