「つなぎが多いそばはダメ」という大きな勘違い

つなぎにはいろいろな役割があった

さて、本来はそば粉だけで作られていたそばに、なぜつなぎとして小麦粉を混ぜるようになったのか。まず最も大きな理由が、文字どおり、そばをつなぐためである。麺料理によく使われる小麦粉は、粘りのもととなるグルテンを豊富に含んでいて、麺状にしやすい。そのため、古くからうどんなど、さまざまな麺料理で使われてきた。

こちらが田舎そば(撮影:今井 康一)

しかしそば粉にはグルテンが入っていない。そのそば粉を麺状のそば切りとして作るために、小麦粉がつなぎとして使われるようになったのである。その歴史は古く、江戸時代にはすでに小麦粉が使われていた。

「もちろん、十割でもそばは打てます。ただ、昔は打つ技術がちゃんと研究されていなかったので、つなぎが必要だったんでしょうね。打ち方だけでなく、粉のひき方でも粘り方は変わってきます。こちらも今は製粉技術が進歩して、十割でも打ちやすい粉をひけるようになりました。また、そばの実はその部位によって特性が違うので、どの部位の比率を上げるかによって、打ちやすさ、コシ、つるみが変わってきますよ」(福田氏)

のどごしにも貢献している

つなぎを使うようになった理由は、打ちやすくするためだけではない。つなぎはそばの重要な魅力である、喉越しにも貢献している。実の中心部分を使った、いわゆる更科そばはツルツルとした気持ちいい喉越しがあるが、風味のある外側の甘皮部分を使ったそばは、どうしてもザラつきモサつきが出てきてしまう。

(撮影:今井 康一)

小麦粉を混ぜることによって、風味がありながらもツルッとした喉越しを持つそばを作ることができるのだ。先述の「誠や」の田舎そばは甘皮や殻が使われているが、ツルッとした喉越しがある。小麦粉を使うことによって、風味と喉越しの両方を楽しむことができるのだ。

「つなぎも地方によって変わります。新潟のへぎそばは、つなぎに海藻のふのりを使っていて、ツルツルとした喉越しが楽しめます。信州でも昔はオヤマボクチという山菜をつなぎに使っていて、それも喉越しがすごくいいんですよ。小麦粉のとれない地域では、そばを打つため、さまざまなつなぎを使ってきたんです」

つなぎに小麦粉を使えば、のびにくいそばになるという効果もある。町のそば店や立ち食いそば店には昼どきに客が押し寄せるため、注文ごとに茹でていては間に合わず、そばを茹で置きにして対応している。次々に注文が入るので、置かれている時間は数分と短いのだが、それでもそばはのびてしまう。そこに小麦粉を使えば、茹で置きのそばでものびていない状態で提供することができるのだ。

「小麦粉も薄力・中力・強力とあって、いろんなタイプがあります。ひと口につなぎといっても、打ちやすさのため、喉越しのため、だれないようにするため、それぞれで小麦粉を変えなければいけません。どんなそばを売るのかで、つなぎを変えていく必要があるんです」

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