ラガルドECB総裁が語った市場との向き合い方 「タカでもハトでもなくフクロウ」の意味とは
もう1点が目下、注目を集めている政策戦略の見直しに関するメッセージであった。今やECBウォッチャーは目先の「次の一手」よりも、見直し作業にどのような論点が組み込まれるかという議論で盛り上がっている。この点、今回の声明文には戦略見直しにかかわる記述がまったくなかった。
これについてラガルド総裁は「失望した方もいるでしょう」と述べ、敢えてそのようにしたのだと説明した。「声明文は戦略見直しに関与すべきではない」という方針を確認したようで、これ自体は正しい判断と考えられる。「現行の政策戦略」と「新たな政策戦略」の目指すところが異なる場合に、それを声明文に併記・混在させると、意思決定のロジックがわかりにくくなるからである。記者からの関連質問には答えるが、全会一致で内容を決める声明文では扱わないという整理なのだろう。
現時点では欧州議会や学会、一般市民の意見も参考にして見直しを進める姿勢であり、あらかじめ決まっている結論はない、と述べた。だが、就任当初から話題となっている気候変動の論点を組み込むことには、やはり前向きな姿勢を見せていた。そのほか技術進歩や経済格差の拡大といった論点も考慮する方針に言及したことは新味があった。
なお、戦略見直しに絡んで最も関心の高い「見直しの開始および終了のタイミング」には言及があった。「見直しは包括的であり、すべての論点を扱う必要があるため時間はかかる。しかし、かかりすぎてもいけない。今の計画では1月のどこかで始めて、2020年末までには終わりたい」とラフなスケジュール感を示した。
「タカでもなくハトでもなくフクロウ」
質疑では、政策理事会におけるスタンスを問われた際、「はっきりと言いますが、私はハト派でもなければタカ派でもありません。私の夢は知恵の象徴であるフクロウになることです(once and for all, I'm neither dove nor hawk and my ambition is to be this owl that is often associated with a little bit of wisdom)」と述べたことが大きく報じられている。
この発言後、ラガルド総裁は政策理事会のメンバーから最善の知恵を引き出し、金融政策決定をしていきたい旨も口にしている。調整能力の高さに定評のあるラガルド総裁らしい発言であり、亀裂の走る内部に配慮したものと考えられる。もっとも「すべてについて完全な合意を得ようというつもりもない」とも述べており、時として多数決を行う局面はやはり出てきそうだ。20人以上の投票メンバーを要する政策理事会では致し方ないことでもある。
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