アメリカを静かに殺す「学生ローン」という爆弾 ローンの総額がついに1兆ドルを突破
もっとも、大半はアンダーソンのように借金を残さずに卒業できるわけではない。実際、数年前に大学を卒業した友人は、月収の25~50%を学生ローンの返済に充てている。日刊紙USAトゥデイが取材したある学生は、「正直、学生にどうやってそんな額が返済できるのだろう」と語っている。「ご存じのように、学士号の場合は20万ドルの借金と卒業するわけなんでね」。
同記事によると、一部の学生は学費で首が回らなくなり、ホームレスになってしまったという。2019年の「大学、コミュニティー、および正義のための希望センター」による調査では、4年制大学に通った人の14%がホームレスを経験している。このような結果を招いたのは、授業料の上昇に加え、食料、電気・ガス、育児、手頃な価格の住宅などのコストの上昇に追いつかない財政支援パッケージなど、複数の要因の組み合わせだ。
ミレニアル世代の結婚や家族計画にも影響
ホームレスの脅威に加えて、学生ローンの借金はミレニアル世代の結婚と家族計画にも影響を与えている。 これはアンダーソンにも当てはまる。「私には教育ローンはないが、それでも私が子どもを持つかどうかという決定には、アメリカの高い教育費用が影響するだろう。同じ理由で、ヨーロッパでの仕事により大きな魅力を感じている」。
2018年のアメリカ労働省の青少年に関する全国縦断調査によれば、この決定は多くのミレニアル世代に共通している。 この研究では、学生の借金と、結婚や子供を持つ時期の延期との間に相関関係が見られた。
こうした中、学生ローン問題は来年の大統領選のカギを握るテーマの1つとなっている。サフォーク大学とUSAトゥデイによる共同の世論調査では、教育は民主党の大統領候補者に議論してほしいトップ5の問題の1つであることが明らかになった。
民主党の大統領候補に立候補したバーニー・サンダース上院議員や、エリザベス・ウォーレン上院議員らは、学生ローンを自らの政策の重要な要素にし、高等教育のほぼ全額無償化と、1兆6000億ドルの借金のほぼ全額、もしくは全額免除を提案している。
また、ジョン・スーン上院議員(共和党)とマーク・ワーナー上院議員(民主党)は、超党派による「雇用主による返済参加」に関する法案を提案。今の法律では、雇用主は、雇用中の従業員の教育費用に対し、毎年最大5250ドルを非課税で補助できるが、ワーナー上院議員らの案は、すでに卒業した従業員の学生ローンの返済の補助として、同様の非課税拠出金を提供できるようにするものだ。
アメリカ人にとっては、頭の痛い学生ローン問題。高い学費を払っても、それに見合うだけの教育やその後のキャリアを得られないこと自体問題だが、放置され続ければアメリカ経済に影響を与える日が来かねない。アメリカはこの「爆弾」をどうするのだろうか。
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