トイザラスに見る「圧倒的強者」の転落パターン 「eコマース」という新規事業をつかみそこねた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

アマゾンとの長期契約により売り上げ確保は確実と思われていたeコマースでしたが、振り返ってみれば、アマゾンはトイザラスから顧客情報や顧客行動に関する貴重なデータを入手した一方で、トイザラスにとっては主流となっていたオンライン事業がリセットされてしまったのです。

さらに、今度は実店舗にも大きな競合が現れます。ウォルマートです。多様な商品を低価格で提供するウォルマートは、玩具を集客の目玉として原価割れまで徹底的に値下げすることで、「価格破壊」をうたっていたトイザラスの特長を潰しにかかります。

オンラインと実店舗双方において手詰まりとなったトイザラスは2005年、投資会社のKKR、ベインキャピタル、ボナルド・トラスティー・トラストの3社連合体にLBO(レバレッジド・バイアウト)という方法で66億ドルで買収されました。トイザラスのキャッシュフローや資産を担保にした借入金をベースに買収する、という手法です。

しかし、結果的にはこの買収がトイザラスの再浮上の芽を摘む形になりました。買収の際に抱えた50億ドルもの負債により事業への投資がままならず、そして株主3社の思惑の違いにより当初2010年に目指していた株式上場も断念せざるをえない状況に追い込まれます。

最終的には債務返済の期限の到来とともにゲームオーバー。2017年9月、連邦倒産法第11章を申請することになります。アメリカの小売業として負債ベースで3番目に大きな倒産でした。

ルール変更の初期対応を誤り、のちに意思決定ミス

既存事業における圧倒的勝者が、新しいルール変更についていけずに敗者へと転じてしまう。トイザラスの歴史はその典型的な失敗事例と言えるでしょう。今回のターニングポイントは、1990年代後半のeコマース事業への入り方で2つの失敗をしてしまったことにあります。

1つ目は、eコマースの出現をゲームのルールが変わったと認識せず、「既存のルール前提での正しい対応」をしてしまったこと。そして2つ目は、新たなルールであると認識し直した後に、「他人任せ」で対応しようとしてしまったことです。

この2つは大きなルール変更があった際の「組み合わせコンボ」のようなもので、初期の対応の遅れで浮足立ち、その後に一発逆転を狙うあまり、冷静に考えればありえない意思決定で自らにとどめを刺してしまう……という典型パターンです。

次ページトイザラス倒産における教訓は?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事