3メガ損保が直面する「脱石炭」の猛烈な風圧 世界の流れに乗り遅れ、ランキングで低評価
日本の大手損保は二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを大量に排出する多くの石炭火力プロジェクトについて、これまでに保険を引き受けてきた。田辺氏は「世界規模で脱炭素化への動きが加速する中で、そのことが自社のビジネスを危うくしている」と解説する。
これまで石炭火力発電は、安価で安定したベースロード電源とされ、日本における電力供給の3割以上を占めてきた。中国やインド、東南アジア諸国の石炭火力への依存度は日本以上に大きい。
損保や再保険市場で加速する「脱石炭」
しかし、2015年12月に気候変動問題に関するパリ協定が合意されて以降、損保ビジネスでも「脱石炭」の傾向が鮮明になっている。Unfriend Coalキャンペーンネットワークによれば、石炭関連事業への保険引き受けを停止または制限する方針を掲げている保険会社は2019年12月時点で17社(ランキング対象は14社)に達し、これらの保険会社のシェアは損保市場の9.5%、再保険市場に至っては46.4%を占めているという。
1年前の2018年11月時点で脱石炭火力に相当する同方針を掲げていた保険会社は欧州系の7社にとどまっており、シェアもそれぞれ7.3%、33.4%だった。この間にアメリカやオーストラリアの企業を含めて10社が新たに脱石炭の方針を掲げるなど、動きが加速している。
通常の保険引き受けで対応できない困難なリスクを引き受ける再保険会社による方針の厳格化は、とりわけ大型プロジェクトに影響を与える。そのことがきっかけとなって銀行融資も難しくなる。
もっとも、世界を見渡すと、いまだに多くの石炭火力発電プロジェクトが存在している。国際環境NGOが運営するWebサイト「Global Coal Plant Tracker」によれば、2019年7月時点で980ものプロジェクトが建設中もしくは計画段階にある。そのうち中国が384件と4割近くを占めるほか、インドネシアは90件、ベトナムでも33件のプロジェクトが進行中だ。インドネシアやベトナムでは日本の政策金融機関や大手商社も関与している。
日本でも現在、進行中の案件は22件あり、日本の3メガ損保も日系企業が関与する案件を中心に関与しているとみられる。
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