グレタさんで注目、「飛び恥」が鉄道に追い風 夜行列車復活に補助金、欧州各国の危機感

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オランダは、鉄道会社側の事情で夜行列車の運行が取りやめられたという経緯があり、もともと需要が無かったわけではないが、Flygskam(飛び恥)運動をきっかけとして鉄道需要が増加したことが、政府主導による復活を後押しする結果へとつながった。

アムステルダム市内を走るシティナイトライン(夜行列車)。2016年に廃止された時点で毎日2本運行されていた=2014年4月(筆者撮影)

実際、この夏のオランダ国内における鉄道需要は、対前年比で13%も増加したことが調査で明らかになっている。

今後は、これまで航空便に頼っていた国際長距離区間の夜行列車拡充と、昼行列車で所要6時間までの区間を鉄道へ誘導するため、インフラ基盤の整備を行うとしている。

ドイツは鉄道運賃にかかる付加価値税(VAT)を大幅に減税する。電力の57%を再生可能エネルギーから得ているドイツ鉄道は、ICEの帯を緑色にして環境保護をアピール(筆者撮影)

ドイツは、サミットでのグレタさんの発言より3日前の9月20日、気候変動の影響を緩和するという名目で政府が540億ユーロを支出すると発表しているが、これらの大半は鉄道へ投資されることがわかっている。

また、鉄道の利用を促進するため、50km以上の長距離鉄道利用にかかる付加価値税率を現在の19%から7%へ大幅に引き下げることを決定した。これは実質、ドイツ鉄道の運賃を約10%引き下げることと同じであり、その一方で減税分を補うため、航空業界には税負担額を増やすことも検討されている。航空業界にとっては、非常に厳しい局面を迎えたことになる。

交通機関の選択はわかりやすい環境活動

こうした各国の動きを見ても、公共交通機関の選択というのは、一般市民にとって最も手を出しやすく、かつわかりやすい環境活動の1つと言えるのではないだろうか。

なぜなら、同じ区間を移動する場合、乗客1人当たりが排出する二酸化炭素の量は自動車や航空機に比べて鉄道は数分の1で済む、という数字が明確に示されているからだ。

移動時間や料金などに大きな差がないのであれば、なるべく環境に優しい交通機関、すなわち鉄道を使おうと考える人が増える可能性が高い。それに加えて、減税のため値下がりするとなれば、利用客が鉄道に流れることは当然の結果と言える。

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