「たまごかけごはん」一大ブームを起した村の今 地方活性化に求められる「地域商社」とは

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そして、隣接する複数の地域の特産品をまとめて取り扱うことや観光客に近隣の観光地を互いに紹介しあうなど、地域商社同士が協力して相互補完するといった取り組みを行うことが有効である。

全国的な企業が設立する地域商社と各地の地域商社が協力するパターンも考えられよう。

ユニークな「地域商社」の事例を紹介

【事例①】全国型と地域型の企業が連携する豊岡市

ここでは、全国レベルの事業ネットワークを持つ高速バス会社が兵庫県豊岡市に2016年に設立した地域商社を見てみよう。

豊岡市は着地型観光の開発によって市内を訪れる外国人を増やしたいと考え、「豊岡版DMO(Destination Management Organizationの略。観光資源の活用による観光地域づくりを担う組織)」として「一般社団法人豊岡観光イノベーション」を立ち上げ、地域銀行(地方銀行および第二地方銀行)、商社、旅行代理店、バス会社等から人材を派遣してもらっている。

人材を派遣した企業のうち、兵庫県北部エリアを地盤とするバス会社は豊岡市周辺地域の周遊のためのアクセスを、また全国的な事業展開を行う上記バス会社は大都市圏から豊岡市周辺までのアクセスを担っている。

これは、関係者がそれぞれの長所を生かし、弱点を補完する形である。外国人観光客誘致のためには、外国人観光客向けで実績のある全国的な企業と回遊性確保に向けた周辺エリアの企業の両方を巻き込んだスキームが必要であり、豊岡市の事例はそのモデルといえる。

【事例②】ニッチ市場開拓で全国に一大ブームを読んだ雲南市

次の事例は、島根県雲南市にある「吉田ふるさと村」である。この会社は地域商社の先駆けの一つともいわれる存在で、1985年に旧吉田村(市町村合併に伴い、今は雲南市吉田町)と住民等の出資により設立された。

「ノスタルジックバスツアー in雲南」は比較的安価でここでしか味わえない素晴らしい体験を提供してくれる。地元産食材を使った田舎料理バイキング(写真:みずほ総合研究所)

地域商社に求められるニッチ市場の開拓による持続的なビジネスを考えると、地域商社への金融支援に関しては、吉田ふるさと村のような住民による出資が含まれることは望ましいといえる。

その「吉田ふるさと村」は、2002年に発売したTKG(たまごかけごはん)専用醤油「おたまはん」のブームで知られ、口コミで徐々に評判が広がり、全国各地でTKG専用醤油が開発される火付け役になった。

吉田ふるさと村はTKG専用醤油で培ったブランド力を利用して、現在、着地型観光事業にも取り組んでいる。「ノスタルジックバスツアー in雲南」はその一つで、超豪華列車の乗客の立ち寄りコースと同じ体験がお得にできることが話題となっている。

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