トヨタにも繋がるヤフーLINE統合が起こす衝撃 日本が「米中に次ぐ第三極」を目指すカギ

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規模では圧倒的に劣るものの、2社の経営統合は、中国2大プラットフォーム企業をさらに超えるような優れた顧客価値を提供し、日本発の破壊的イノベーションが生み出されることが期待できるのではないかと考えられます。

すべての産業の秩序と領域を定義し直す戦いへ

筆者は、ヤフーとLINEの経営統合はさまざまな産業にインパクトを与え、まるで玉突きが起きるように多くの産業で再編が始まるのではないかと予想しています。非常に強力な2社連合ですから、競合他社が「とても1社では勝ち残れない」と危機感を強めることは間違いありません。スマホ決済やネット通販など、業種を超えた形での連携や再編が起こることは大いに考えられます。

さらに、金融産業においてもスマホ決済サービスに多業種からの参入が相次いでいることから、2社の経営統合が再編を巻き起こす業界は金融へも及ぶ可能性が高いでしょう。例えば、LINEが野村證券と組んでLINE証券を、またみずほ銀行と組んでLINE Bankを設立してきた一方で、ヤフー側ではSBIと金融事業において連携を強めていこうとしています。

この分野のこれらの企業だけでも戦略の練り直しや強化が求められ、大きな再編につながる可能性も秘めているのです。より直接的に気になるのは、国内でECや金融事業を展開し、通信事業にも本格的に乗り出してくる楽天です。楽天を中核としてさまざまな分野における合従連衡が起きることが考えられます。

もっとも、筆者は2社経営統合をきっかけに起きる業界再編は、EC小売りや金融にとどまるものではなく、すべての産業の秩序と領域を定義し直す戦いにまで発展すると予想しているのです。

例えば、ソフトバンクとトヨタ自動車が提携している次世代自動車産業は、まずは「クルマ×IT×電機・電子」が融合しつつある巨大な産業です。そこにはクリーンエネルギーのエコシステムとして電力・エネルギーが加わってきます。半導体消費が大きいことに加えて通信消費が大きいのも、次世代自動車の特徴です。クルマが「IoT機器」の重要な一部になる近未来においては、通信量は膨大なものになります。

これらがすべて交差してくると「東京電力のような電力会社やNTTドコモのような通信会社がクルマを売る」「トヨタのような自動車会社が電力や通信を提供する」「自動運転化後はライドシェア会社がクルマの最大の買い手となる」といったことも現実になってくるでしょう。MaaS(Mobility  as  a  Service)分野に目を転じると、航空会社や鉄道会社といった企業も新生モビリティー産業の主要プレーヤーとして期待されているのです。

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