パナソニックがテレビを白モノ事業に統合へ 4月人事で津賀改革は仕上げの段階に

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就任から最初の1年について津賀社長は「赤字企業からの脱却という"反転"は果たせたが、新たな事業領域で利益を伸ばしていく"攻勢"は叶わなかった」と話していた。攻勢に相当する領域こそがB2B事業の強化なのだが、そこに明確な手を打てていない、というのが昨年の反省だった。

その文脈から考えると、今回の組織改革はAVCネットワークス社をB2Bに集中させることに意味がありといえる。厳しい収益状況にあるテレビなどを切り離せばAVCネットワーク社の利益体質は確実に強くなり、B2Bの利益を拡大させていく事業方針が、決算としても見えやすくなるわけだ。

逆に、テレビなどを受け取る格好になるアプライアンス社は売り上げ規模が突出して大きいカンパニーになるものの利益率は大幅に低下する見込み。人員面でも過剰感が出てくる。社内カンパニーとして合理化を進めるだけでなく、その先にはアプライアンス社を100%出資子会社として切り離す選択肢もありうるかもしれない。

ソニーは今年7月をメドにテレビ事業を100%出資子会社にするが、これにより目指すのは損益の明確化だ。パナソニックの場合も、アプライアンス社を分社化し自立させれば、B2Bの利益をもらさずB2Bに再投資できる体制に持ち込める。そのメリットは小さくないはずだ。

副社長がインドに常駐

また、今回の役員人事では、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の社長としてB2Bビジネス拡大に力を発揮してきた山田喜彦氏が海外戦略地域担当として代表取締役副社長に昇任。インド・デリーに常駐し、インド市場の開拓に注力することも明らかになった。

今回の役員人事は、"攻勢"の方向性を、組織図の形で明確に示した、といえるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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