日経平均が2万4270円を更新する条件は? IT関連財市況の回復の足取りは引き続き順調

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またアメリカ・半導体大手が製品開発に苦戦した結果、PCが出荷できず、その余波でメモリの出荷が滞るという不運も重なった。

このように現在の半導体市況は二面性があるのだが、1つの結論として韓国の輸出統計が示唆するほど現在の半導体市況は悪くないと考えることできる。韓国の輸出対比でアナリストの業績予想(1株益)が堅調にみえることを不気味に感じるかもしれないが、それはメモリに特化する韓国の産業構造が裏目に出ている時間帯だからであろう。韓国の輸出統計が示唆するよりも現在の世界景気は底堅い可能性がある。

話を日本に戻すと、現在アナリストの業績予想は下方修正が一巡し、上方修正方向に転じている段階である。上述のマクロ統計改善のほか、企業が発表する会社計画値が好転しつつあることを反映したものとみられる。そこで筆者はアナリストの業績予想がどういったタイミングで動いているのか、マクロ指標をベースに考えてみたところ、製造業PMIの新規受注・在庫バランスと密接な連動性があることがわかった。

リビジョンインデックスは一定の価値がある

アナリストの業績予想が上下どちらの方向に向かっているかを示す「リビジョンインデックス」は製造業PMIの新規受注・在庫バランスと強い相関がある。アナリストがこの指標をみて業績見通しを変更しているわけではないが、結果的に両者の動きが一致するのは新規受注・在庫バランスが映し出すマクロ環境がアナリストの感じる「空気」に一致するためであろう。株価に重要なインパクトを与える「アナリスト予想を予想するツール」として一定の価値があるだろう。

(出所)QUICK、Markitより筆者作成

最後にリスク要因を触れておく。一言でいえば、「半導体以外」の弱さである。半導体(IT関連材)は現在「5G」「AI」「IoT」「自動運転」といった将来有望なテーマに囲まれており、将来の成長ストーリーが描きやすい反面、その他セクターは現状、将来見通しともに冴えない。IT関連財を起点とする広範な回復が期待されるものの、現段階では資本財(産業用機械)セクターへの波及すら限定的である。

鉱工業生産、貿易統計、機械受注、工作機械受注、日銀短観といったマクロ統計で共通しているのはIT関連財の「逆行高」である。今後、日経平均株価がさらなる上昇をするには「半導体以外」の回復が不可欠になる。

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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