2019年も物議醸した「ステマ」招く根本的な理由 ペニオク騒動から7年、モラルに頼るのは限界

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今年も取り沙汰されたステマ騒動(写真:xiangtao/PIXTA)

2019年も残り1カ月を切った。今年1年を総括するさまざまなイベントが開かれ始めている中、12月2日(月)には「『現代用語の基礎知識』選2019 ユーキャン新語・流行語大賞」が発表された。年間大賞はラグビー日本代表のスローガンとなった「ONE TEAM」。トップテンに選出された「計画運休」や「軽減税率」「タピる」「免許返納」なども今年の世相を映すキーワードだ。

毎年発表される流行語大賞にはさまざまなワードが候補に上るが、7年前の2012年にノミネートされていた「ステルスマーケティング(ステマ)」は、いまだによく取り沙汰される。直近でも多数の芸能人や著名人(インフルエンサー)がSNSで紹介していた「血液クレンジング」や、京都国際映画祭で吉本興業が行っていたPR事業の一部が「ステマではないか」と物議を醸した。

いずれも今年10~11月にかけて炎上したが、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」。いつの間にか沈静化してしまった。とはいえ、2つの騒動からはそれぞれ課題も見えた。

SNSの「医療ステマ投稿」は野放し状態

血液クレンジングについて東洋経済オンラインは「血液クレンジング騒動で見えた広告規制の限界」(2019年11月3日配信)と題する記事で問題点を指摘した。詳しくは記事をお読みいただきたいが、端的に言えばSNSの「医療ステマ投稿」は野放し状態にある。

そして吉本のステマ騒動だ。少し今さらの感はあるものの、流行語大賞にノミネートされてから7年も経つのにいまだにステマが取り沙汰されるのは、問題の本質が世の中全般にいまいち理解されていない側面もあるからだ。ここで改めて振り返っておきたい。

発端は京都新聞が報じた『吉本漫才コンビ、ツイートは「ステマの疑い」 京都市の広告と明示なし、識者「アンフェア」』という記事だった(2019/10/28掲載)。京都国際映画祭で吉本興業が行っていたPR事業の一部に、消費者やファンを欺くステマが含まれていたと報じられた。

記事では吉本興業に所属する地元京都出身の漫才コンビ「ミキ」が書き込んだツイートが報酬の発生する広告である旨が説明されておらず、ステマにあたると指摘されている。闇営業から所属芸人の税金滞納、そしてステマ騒動とトラブル続きの吉本興業に対しては、冷ややかな反応と炎上が同時に発生した。

「今さらこんなわかりやすいステマをやるのか」と筆者も当初はあきれていたが、京都市と吉本興業の両者に取材してわかったことは、「ステマ」と「ステマではない広告」の間にある広大なグレーゾーンだ。

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