奥信濃で暮らす老人たちの「自由自在」な生き様 「しょうがねぇ」の精神で生きる豪快さ

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気にしてないですね。写真撮るときは恥ずかしいって嫌がったのに、本を持ってって見せるとすごい喜んでくれて。孫に電話したり、お茶飲み会で「アンタも年取ったね」とか話してるそうです。

僕はやっぱり、渋谷最高!って歌うのはできない。そうじゃなくて、奧信濃人のアイデンティティーを認めたうえで、自分は結構カッコいいと思ってます、みたいな感じでいたかった。“都会カッコいい”にまみれなくても、ここの自然や漬物食べたり、じいちゃんばあちゃんと話したりっていうライフスタイルで、もうこれでいいじゃんみたいな。プラス、それを発信して面白いと言ってくれる人がいれば、自分も認められた感があると思った。まさに、じいちゃんばあちゃんに救われましたね。

”しょうがねぇ”の精神で生きている

──一方で豪雪地帯の厳しさ、過疎化の問題などがある。だからあえて明るい作りを意識しました?

それはないですね。できるだけそのままがいいと思ってて。本の中に2回出てくるじいちゃんがいます。1つは元気だった頃、もう1つは仏壇の遺影。死は悲しいけど当たり前の日常なんですよね。生きやすくない場所で、みんな“しょうがねぇ”の精神で生きてる。雪が降るのもしょうがねぇ、人が死ぬのもしょうがねぇ、ここに住んでるのも全部しょうがねぇって。意識したとすればそっちです。

『鶴と亀 禄』(書影をクリックするアマゾンのサイトへジャンプします)

僕たちの世代はどこで何をしようと完全に自由。でもうちのばあちゃんたちは、勝手に結婚相手を決められて、仕事も農業しかなかった。なのに、見てると何か圧倒的に自由で豪快に生きてる。不思議だけど、そこに“しょうがねぇ”精神があるんじゃないか。

要は僕らって、自由なんだからよりよい選択をせよ、ってつねに迫られてる気分がある。英語で「渋谷最高!」って歌わないとイケてない、買い物はネットでチェックしてからとか、一つひとつに窮屈さを感じるときがある。生きづらさというか。

じいちゃんばあちゃんはそんなのいっさい関係なし。適当に服着て毎日漬物でお茶飲んで、それでいい。この土地で暮らしてることも、いいとこ悪いとこ全部まとめて“しょうがねぇ”で、これだけ面白く生きられるんだったら自分はそれでいいかな。しょうがないはマイナスじゃなく、しょうがなくていいよな、ってとこですかね。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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