お金持ちが「現金よりローン」を積極的に選ぶ訳

借金・負債との"正しいつきあい方"

とはいえ、そうした事態を怖がりすぎてリスクを取らないというのも違う。リスクを取らなければリターンを得ることはできないのは、資本主義社会の大原則だ。

重要なのは、リスクを取る中で「最高のシナリオ」と「最悪のシナリオ」をどちらも読むということ。これがリスクコントロールの肝である。前職での経験の中で富裕層の資産管理を通じて感じたのは、こうした人たちはこのリスクコントロールが非常にうまいということである。

未来を確実に読むことは不可能だ。未来は、現実世界にある複雑な要因がそれぞれどう作用するかによって「分岐」する。

すべての事態がうまく噛み合って素晴らしい結果をもたらしてくれるシナリオ。

やることなすことすべてが裏目に出てしまって最悪の結果となるシナリオ。

そしてその中間に位置する無数のシナリオが、一つひとつの可能性として存在する。

富裕層には経験豊富な経営者が多いが、こうした小さなことが積み重なって起きる連鎖反応の強烈さを、ポジティブなほうにもネガティブなほうにも経験していることが多い。だからこそ、「どちらもありうる」という姿勢で、その両端についてリミッターを外して考えることの価値を知っている。

「運命の歯車」という比喩があるだろう。彼らは、今その運命の歯車がどちらに回っているのかを、客観的に捉えることができる。ギアが「ドライブ」に入っているときに思いっきりアクセルを踏み、「バック」に入っているときにはブレーキを踏んで落ち着かせる。確率に支配される資本主義経済の下では、このアクセルとブレーキの踏み分けが勝負を分ける。

「自己分析」と「ルール化」が冷静なリスク管理のコツ

もっとも、冷静に自分を捉えることは並大抵のことではない。うまくいっていれば調子に乗るし、うまくいかなければ悲観的になるのは普通だ。また、そもそもポジティブな性格なのかネガティブな性格かによっても、状況の捉え方は変わってくる。

そういう意味で、内省の時間というのはとても重要であり、「メタ認知能力」を磨くことが、資本家としての実力を伸ばすために必要なことなのだ。

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例えばもし自己分析の結果、自分がネガティブな感情に寄ることが多いということがわかったのなら、それをルールによって対応することができる。いつも「もうこれより上がるわけがない」と早めに株を売ってしまって機会損失を被ることが多いなら、「売ると決めたタイミングからさらに2日待ってみる」というようにルールを設定するのだ。

一代で富裕層になることを目指すのであれば、小さな元手を低利率で投資していては間に合わない。株や不動産などの資本への投資はもちろんのこと、自分自身への投資についても、どこかでハイリスク・ハイリターンの選択に踏み出すタイミングが必ず来る。

その中で勝算は高い選択肢は何かを突き詰めて考え、徹底的にリターンを追求しつつも、一方で資本をまるっきり失ってしまうような危険な賭けだけは避ける。そのようなリスク管理能力を身に付けることが、資本主義経済を“ハック”するための一番のキモとなる。

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