お金持ちが「現金よりローン」を積極的に選ぶ訳 借金・負債との"正しいつきあい方"

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例えば、会社員をしながらブログを書き続けていて、いずれはフリーか副業でライターになることを考えている人がいたとしよう。

ある日、たまたまAmazonで一眼レフのカメラを見て「写真も撮れるライターなら編集者に重宝がられて差別化できるかもしれない」と気づいた。

しかし、価格は30万円。手持ちのキャッシュはないがクレジットカードは持っている。

1年かけて貯金をするか、いま買うべきか?

私がライターを目指すならすぐさま買う。撮影技術で付加価値をつけたいなら1日でも早く練習しないといけないからだ。

そもそもクレジットカード会社に支払う利息は、年率12.5%で12回払いだとしても2万700円だ。この「2万700円」という金額は、「カメラを1年前倒しで使える権利代」である。

つまり、1年という時間をお金で買っているのと同じことだ。1年前倒しで副業をはじめたら余裕でペイできる。だったら借りたほうが得だ。

挽回が効かない借金は必ず避けよ

しかし、もちろん負債には、いい負債と悪い負債がある。いま説明してきたような、「自分が持つスキルや不動産などといった資本にレバレッジをかけるための負債」はいいものだ。

一方で、「資本ゼロの”着の身着のまま”の状態で負わされる借金」については、この資本主義経済というゲームの中においては絶対に避けなければならない。

というのも、通常の投資では大きな武器となるはずの「複利の強烈な威力」がマイナスの方向に効いて、あなたに牙をむくからだ。借金を返すためにさらに高利の消費者金融からお金を借りるというような状況を想像するとすぐにわかるはずだ。

例えば直近の仮想通貨バブルでは多くの億超えの資本家を生んだが、その陰には億単位の負債を抱えた人もいる。値動きやその値付けに根拠がない仮想通貨のトレードは、運で勝負が決まる文字どおりのギャンブルといって差し支えない。

そんな対象に対して「絶対に上がるはずだ」という夢しか見たがらない人が下手にレバレッジをかけると、利益をもたらし続けてくれるはずの手元の資本がなくなるばかりか、損失を生み続ける借金のみが残ってしまうという事態になりうる。

心理学の概念に「正常性バイアス」というものがある。これは本来誰が見ても危機的な状況に陥っているのにもかかわらず、「自分だけは助かる」と勝手に思い込んでしまうという人間心理の性質を表す。

高いレバレッジに麻痺して、急降下する仮想通貨のリアルタイムチャートを見ながら「大丈夫だ、こんなことがあるわけがない。必ずいつか反転するはずだ」と確たる理由もない希望的観測を持ってしまうというのは、誰しも本当にありうる話なのだ。しかしそうなってしまっては、挽回が難しくなってしまう。

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