なぜ人々は税や社会保障に不満を感じるのか 中間層を覆う21世紀の「社会の大病」の正体

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だから、勤労と倹約の結果である貯蓄が減少すれば、生活不安は一気に現実のものとなる。図が示すように、平成は人々が老後や収入について不安の度を強めていく時代だった。

出所:内閣府「国民生活に関する世論調査」より作成

定年後、95歳まで生きると、年金以外に2000万円の資金が必要だという金融庁の報告書が関心を集めたのも無理はない。僕が「平成の貧乏物語」と呼びたくなる気持ちもわかってもらえるのではないだろうか。

興味深い事実がある。それは、相対的に見て、自分たちが貧しくなっていることを自覚している人が日本には大勢いる点だ。

国際社会調査プログラムによると、「所得は平均以下だ」という質問に賛成する回答者の割合は、日本は41カ国中12位だ。「育った家より地位が低下した」という質問に賛成した人の割合は41カ国中8位、「父親以下の職になった」という質問にいたっては25カ国中1位というありさまだ。

こういうデータもある。「5年前より暮らしが良くなった」という問いに賛成する人の割合は17カ国中15位、「5年後の暮らしが良くなる」という質問ではなんと17カ国中最下位だ。

平成に入って僕たちは明らかに暮らしが厳しくなった。所得格差も広がった。そのうえ、自分たちが以前よりも貧しくなっていることに薄々気づき始めている。それなのに、不思議なことに、他国に比べて所得格差の存在や必要性を認めようとはしない。

「格差は大きすぎる」という問いに賛成する回答者の割合は、日本は42カ国中28位、「所得格差を縮めるのは政府の責任だ」という問いに同意する人たちの割合は42カ国中36位だ。

「中の下」と思いたい人々

なぜ格差の存在やその是正の必要性を認めようとしないのだろう。その謎を解くカギは、依然として続く「中流意識」にある。内閣府の「国民生活に関する世論調査」のなかに、暮らしぶりを尋ねた項目があるが、自分は「中流」と回答した人の割合は約93%に達する一方、「下流」と回答した人の割合はわずか4%だ。

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