なぜ人々は税や社会保障に不満を感じるのか 中間層を覆う21世紀の「社会の大病」の正体
僕らは確実に貧しくなった
平成が終わった。メディアの人たちからは「平成はどんな時代だったんでしょう」と何度も聞かれた。平成元年の僕はまだ17歳。振り返るほどの記憶や語りたいほどの体験があるわけじゃない。でも、頭に浮かんだのは「平成の貧乏物語」ということばだった。
平成を経済面からみれば、まさに停滞の31年だった。この間に共稼ぎ世帯の数は約6割増え、夫婦共稼ぎ世帯数は専業主婦世帯数の倍以上になった。それなのに、勤労者世帯の収入は平成9(1997)年で頭打ちになり、22年経った現在でもその水準を超えられていない。
雇用の非正規化も進んだ。世帯収入300万円未満の世帯割合は31%、400万円未満の世帯割合は45%になった。平成に入ってしばらくはこの割合は減っていた。だが現在では、平成元年とほとんど同じ水準に戻ってしまった。
日本は国際的に見て、税や社会保険料の負担が低い。その裏返しで貯蓄率はイタリアと並んで先進国最高レベルだったが、現在ではその面影すらない。
国民経済計算によると家計貯蓄率は2%強であり、金融広報中央委員会の調査では、2人以上世帯の3割、単身世帯の5割が「貯蓄なし」と回答している。
所得の減少は日本経済の衰退を象徴する出来事だ。1人当たりGDPは平成元(1989)年の世界4位から26位へと順位を落とした。同じく平成元年に企業時価総額トップ50社のうち32社を占めていた日本企業だったが、いまではトヨタ1社を数えるのみである。
かつての日本は、北欧とならんで平等な国だと言われた。だが、相対的貧困率はOECDの調査対象国のなかで9番目に高く、所得格差の大きさを示すジニ係数の大きさも11位という状況だ。
僕は日本の福祉国家の特徴を「勤労国家」と表現してきた。日本には、勤労し、倹約し、身の丈に応じて生きるという通俗道徳が色濃く残っている。老後、子どもの教育、大きな病気、住まい、これらをすべて自己責任で備える社会を僕たちは作ってきた。
現役世代の生活保障はとにかく貧弱だ。社会保障給付を対GDP比で見てみると、先進国のなかで下から3番目、また義務教育はタダだとは言うものの、修学旅行費、給食費、学用品費等の重たい自己負担がある。大学でも多額の授業料が必要となる。
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