小児がん患者「感染症かかりやすい」切実な悩み

予防接種で得た免疫力が治療過程で低下・消失

小児がん患者が感染症にかかると重症化しやすい(写真:spukkato/PIXTA)

宮本潤子さん(仮名)の息子である隆行さん(仮名)は急性白血病を患い、抗がん剤治療を受けた。

白血病とは血液をつくる過程の未熟な骨髄芽球に何らかの遺伝子異常が起こり、がん化した細胞(白血病細胞)が無制限に増殖することで発症する。大きく分けて急性と慢性に分かれる病気だ。

隆行さんは一連の治療を経て、幸い白血病そのものは寛解となった。寛解とは症状や検査結果でがん細胞の存在を確認できなくなった状態だ。体内にはがん細胞が残っており、治療を継続しなければ再発するため、完全に治ったワケではないが、かなり落ち着いた状態といえる。

ところが問題が生じた。昨年10月、隆行さんは水痘(水ぼうそう)にかかってしまったのだ。

既往症の治療歴によっては、死に至る可能性もある水痘

水痘ワクチンは、2014年10月から法定接種に加えられ、費用は公費で助成されるようになった。1歳になったらすぐに1回目を接種し、最低3カ月以上を空けて2回目を打つ。

隆行さんも予防接種は打っていたのだが、水痘にかかってしまった。原因は予防接種によって得られた水痘ウイルスへの免疫が、急性白血病の治療において投与した抗がん剤の影響によって消失してしまっていたからだ。

健常児の場合、水痘を発症しても軽症で済むことが多い。感染者と接触したあと、2週間程度の潜伏期間を経て、発熱や全身倦怠感などの症状とともに、全身に3~5ミリ程度の丘疹が生じる。その後、丘疹は水疱へと変化し、やがて膿がたまり(膿疱)、最終的にはかさぶた(痂皮)となって治癒する。

余談だが、水痘ウイルスはその後も体内から除去されることはなく、神経節に潜伏する。加齢に伴い免疫が低下すると、神経節に沿って増殖し、水疱を生じる。長期間にわたり神経に沿った痛みを残すことで有名な帯状疱疹である。

話を戻そう。水痘は一部で重症化する。抗がん剤治療を受けた白血病の小児や、ステロイドホルモンを長期間にわたり投与されているネフローゼの小児では、肺炎や脳脊髄膜炎を起こし、時に致死的になる。

隆行さんは適切な治療によって、幸い後遺症なく治癒したが、これは運がよかっただけだ。肺炎や脳脊髄膜炎を起こしていてもおかしくはなかった。

次ページ抗がん剤を投与された小児患者に迫る危険
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