NECで顔認証一筋20年取り組む男の仕事哲学 世界一を続けられる理由を今岡仁氏に聞く
一方、NECは検索速度でも2.3億件/秒というハイパフォーマンスを残している。これは日本の総人口1億2000万人から1人を見つけ出すのに0.5秒しかかからないことを意味している。速度だけでみればNECに匹敵する結果を残した参加企業が複数社あったが、難しいのは通常相反する速度と精度をいかに両立するか。その点でもNECの存在はやはり際立っている。
さらに強調できるのは、加齢による経年変化の影響にも左右されずに高精度を保てていることだという。
「例えばパスポートの有効期限は最大10年だから、空港の出入国に顔認証を使うためには10年前の写真と照合して本人かどうかを判別できる必要があります。こうしたベンチマークテストで圧倒的な精度を実現しているからこそ、信頼して弊社のシステムを使ってくださいという言い方ができるわけです」
数学理論とエンジニアリングの組織的融合
では、NECはなぜこれだけの高精度の顔認証を実現できているのか。NISTのベンチマークテストはハードウエアに関しては全参加組織が同じ条件で争っており、すべてはソフトウエアの性能の差、アルゴリズムの性能の差に集約されると今岡さんは言う。
「普通にAとBにクラス分類するだけのアルゴリズムを使っているところもある中で、弊社では顔認証に特化したアルゴリズムを使用しています。積み重ねたノウハウ、技術、データの量がものを言う世界ですから、そこにはやはり何年も前から取り組んできたアドバンテージがあります。顔認証のアルゴリズムなんて適当に作っていると思うかもしれませんが、数学の理論まで立ち返って、結構まじめに研究しているんですよ」