NECで顔認証一筋20年取り組む男の仕事哲学 世界一を続けられる理由を今岡仁氏に聞く

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

かつては今岡さん1人で研究していた時代もあったというが、競争が激化した今日はもはや1人の天才でどうにかできる世界ではない。NECもチームで分業してあたっているという。

今岡仁さん(写真:『エンジニアtype』編集部)

「例えば最もわかりやすいのは、顔の特徴を検出するフェーズと、検出した特徴をデータベースにある画像と照合するフェーズの切り分けです。ほかにもこのようにプロセスを細かく区切って分業しています。その意味では今の私は少しマネジメントの役割に近くなったのかもしれません。組織として勝つことを考えています」

今岡さん自身ももともとの専門は理論物理。そうした知見が高度なアルゴリズムを作るのに役立っていることは前回のインタビューでも触れた。だが、リサーチだけでは「組織として勝つ」ことはできないと今岡さんは言う。

「エンジニアもとても重要です。フラスコが10本あって、その中から1本の当たりを見つけようとするとき、その1本をどうやったら見つけられるかを研究するのがリサーチャーだとすると、素早く10本振る仕組みをつくってしまえるのがエンジニア。

もちろん1本必中でやってしまえるのがいちばんすごいけれど、ほかの人が1本を探している間に10本すべて振ってしまえば勝ちですよね。だからリサーチャーだけがすごくても、エンジニアだけがすごくてもダメ。いろいろな人が組み合わさることが大切なんです」

今岡さん自身は「リサーチャーでありながらソフトウエアを作るのも好き。ひたすら思考実験を繰り返しながら、一方では手を動かしてもきた」。今はそれをチームで体現するということであり、組織をつくるうえでは意図してさまざまなバックボーンのメンバーを集めているという。

NECが「日本だけ」にこだわらない理由

「世界一の技術」の看板の下に、NECの顔認証はここへきてビジネスとしても大きな広がりを見せている。わかりやすいのは各国で続々と導入が進む空港の税関システム。そこからさらに進んで、オフィスやホテルをも1つのIDでつなぎ、シームレスな体験を実現する実証実験なども進んでいる。この7月には世界最大の航空連合スターアライアンスとの協業を発表した。

(出典:日本電気株式会社〈NEC〉)

記憶に新しいところではラグビーワールドカップ2019のメディア入場時の本人確認、さらには東京2020オリンピック・パラリンピックでの採用も決まっており、ビジネス的なインパクトは大きい。

次ページ日本国内で実用化が遅れている理由
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事