「レアな人材」になった人が歩んできた意外な道 会社から出て生きて行くための秘訣

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小宮山利恵子さん(撮影:梅谷秀司)

小宮山:理想的なのは、自分の「好き」を突き詰めたら、まだほかが参入していない分野で共感とニーズが高まって、お金も稼げるようになった、という流れだと思います。要するに、競争の激しい既存市場のレッドオーシャンから、競争のないブルーオーシャンに漕ぎ出したほうが、より早く自己実現できる可能性が高いですよね。

例えば今、世界中で需要があるデータサイエンティストになろうと思って、何年もかけてスキルを身に付けても、いざ働こうと思ったときにはAIに取って代わられて仕事がなくなっているかもしれません。だとしたら、自分が好きなことを究めてアウトプットして、人の役に立つことを始めたほうがいい。

何かを成し遂げる人はやり抜く力が高い

ピョートル:そのとき注意すべき点は、「アーティストになりたい」「自分で何か始めたい」と、いきなり大きな目標を掲げないことです。目標が達成できないとわかるとやる気を失って、すぐ挫折しますから。

そうではなく、趣味でも何でもとりあえずやってみて、1日15分ずつでも月に数回ずつでも、少しずつ続けて上達したら、周りに公開してみる。いつまでに何ができるかわからなくても、そういうことをやり続ける人と何もやらない人とでは、結果的に大きな差がつきます。何かを成し遂げる人は、このグリット(やり抜く力)が高いですね。

小宮山:「できるか、できないか」じゃなくて、「やるか、やらないか」。私もそれに尽きると思います。

ピョートル:仕事も同じで、例えば何か問題にぶつかったとき、自分にその問題を解決できる資格があるかどうかは関係ないんです。

それよりも大切なのは、問題を正しく定義して、解決するために何が必要なのか考えること。そして、自分で解決できることなのか、誰かにお願いしたほうがいいのか、そのほかの方法があるのか見極めること。解決のための選択肢がわかれば、あとは実行に移していくだけですから。

いちばんよくないのは問題を前にしたとき、すぐ「できる、できない」で判断することです。とくに女性は、仕事がうまくいっても、「自分はできない」と自己過小評価する「インポスター症候群」の人が多いので、100%わからないことでもとりあえずやってみて、できたことだけでも自信を持ったほうがいい。

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小宮山:根拠のない自信って、ものすごく大事ですね。私は家庭が貧しくて、高校から大学院まですべて奨学金で進学したので、海外留学なんて無理だと思っていたんです。ところが大学院時代に、韓国留学の奨学金制度があることを知って、ハングル語も話せないのにダメ元で応募したら受かった。そのとき、「お金がないと留学できない」と思い込んでいたバイアスが外れて、たたけば開くドアがあることを知りました。

その経験が自信となって、やる前から諦めることはほとんどしなくなりました。20代の国会議員秘書時代には長期休暇をとって、チュニジア政府支給の奨学金でチュニジアにも留学しました。アラビア語なんて勉強したことなかったんですが、めちゃくちゃ楽しくていい経験になりました(笑)。私の場合、そういうふうに、根拠のない自信で自分をモチベートしているところがありますね。

ピョートル:わかります。それもアクセルとブレーキですよね。条件や能力とは関係なく、アクセルを踏んで行けるところまで行ってみる。でもアクセルを踏み過ぎると大変なことになる場合もあるから、適度にブレーキも踏まなきゃいけない。

実際に車を運転していると、適度にアクセルを踏んでいるときは、ブレーキを踏まなくてもちょうどいいスピードで走れるから楽しいんです。まずは何でも、適度にアクセルを踏む感覚でやってみることですね。

(後編に続く)

樺山 美夏 ライター・エディター

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かばやま みか / Mika Kabayama

リクルート入社後、『ダ・ヴィンチ』編集部を経てフリーランスのライター・エディターとして独立。主に、ライフスタイル、ビジネス、教育、カルチャーの分野でインタビュー記事や書籍のライティングを手がける。

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