小林武史さんの農場で"異分野の若者"が輝く訳 「なんでその仕事なの?」にはこう答える

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驚くほど柔らかいシフォンケーキを手際よく取り出す小林真理さん(撮影:東洋経済オンライン編集部)

そう話す小林さんの表情ははつらつとしている。お菓子作りはもともと好きで、商社で働いていたOL時代からの趣味だった。一方で、人が集まる場所にも興味があり、お菓子作りと場所探しのため、都内の物件を見て回っていたこともあったという。商社の仕事に疑問を持ちはじめたのもその頃だった。

「日本は、化学肥料や農薬を海外にたくさん輸出して、海外からたくさん食料を輸入しています。その実情を内側から見てしまってから、生産者と消費者の距離が離れてすぎている社会のあり方に、違和感を覚えるようになったんです」

もちろん、市場経済が回らないと世の中が成り立たないこともわかっていた。しかし当時まだ20代半ばだった小林さんは、これからの長い人生を考えたとき、違和感がある仕事を続けることに迷いがあった。

「自分が理想とする生き方と働き方が同じ方向を向いているほうが楽しいだろうな、と思ったんですよね」

自然と共生する人間本来の暮らし方がいちばん美しい

その“理想”とは、どういうものなのか。

小林さんが手がける絶品シフォンケーキ(撮影:東洋経済オンライン編集部)

「やはり好きなお菓子作りをすることと、人が集まる場所づくりをすることですが、どんな場所でも人の営みがあってこそ。そう考えると、自然と共に生きてきた人間本来の暮らし方がいちばん美しい。それを今も実現できるのは農業だよなって思ったんです」

ちょうどその頃、知り合いだった新井さんが、「KURKKU FIELDSに来てみたら」と小林さんに声をかけたのだ。

「彼女は、農場を見学した後も一年ほどウジウジ悩んでいました。クルックへの転職を決めてシフォンケーキを焼きはじめてからも、さらに一年ほどモヤモヤしていた。ようやく吹っ切れたのは、つい最近のことですよ」

新井さんはそう苦笑いする。横で聞いていた小林さんが、その理由を説明してくれた。

「最初、農場見学にきたときは、ここで働くつもりはまったくなかったんです。でも、土地も建物も持っていない自分が、人が集まる場所でお菓子を作りながら、理想としていた人間本来の営みを実践するって、そんな簡単にできることじゃない。それが、この農場では実現できるんですよね」

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