小林武史さんの農場で"異分野の若者"が輝く訳 「なんでその仕事なの?」にはこう答える

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今でこそ笑顔が絶えない小林さんだが、農場近くに移住して今の仕事に納得できるまで、モヤモヤした時間が長くあったのは、当然と言えば当然のことだろう。都心の大企業で高いお給料をもらってバリバリ働いていたOL時代とは、何もかもが180度変わったのだから。

「ここに来た当初は、ひたすらシフォンケーキを焼いてばかりで、お菓子を作るためだけに転職したわけじゃない、と思い悩んだこともありました。でも、この農場で育てた食材を使ったケーキを食べたお客様の笑顔を見るのは、やっぱりうれしくて。私が目指していた人の営みを、ここではちゃんと実践できている。日々、そう実感する中で、自分が選んだ道は間違っていなかったと納得できるようになりました」

大企業でも、個人でも果たせなかった、理想の生き方。KURKKU FIELDSには、その環境が整っていて、志を同じくする仲間もいる。恵まれた条件の新天地で、小林さんはさらなる夢を膨らませているようだった。

目玉のひとつである滞在型トレーラーハウスについて説明する新井洸真さん(撮影:東洋経済オンライン編集部)

「僕はほかの仕事を知らないのでモヤモヤしたこともないですし、今の仕事にとても満足していますね」

そう話す新井さんは、もともと教育に興味があり、東京学芸大学の教育学部で教員免許を取った。そのあと、筑波大学大学院にある体育専門学群の野外運動研究室に入り、登山やキャンプやバックカントリースキーなどをやりながら野外教育について研究していた。

「本当はその後、研究者になるつもりだったんです。でも、「体育って教育分野の中でも特に軍隊教育の名残があるんですよね。研究環境としても体育会系の前時代的な風潮が残っている中で研究するのは無理があるなと思って。それですっかり乗り遅れた就職活動を始めたら、『日本仕事百貨』という求人サイトで、この農場のプロジェクト立ち上げメンバーを募集していたんです」

「完成形のない施設を作りたい」というビジョンに共感

新井さんが入る直前まで、KURKKU FIELDSを運営する株式会社KURKKUは、温泉やフードコートや直売所などを併設した大型商業施設を作る構想で話が進んでいた。ところが2年ほど前、新井さんが入社した頃に、KURKKU代表取締役のプロデューサー・小林武史さんが事業構想を大きく変える決断をしたのだという。

「当時は大手旅行会社も事業化計画に入っていて、『世の中こういうのが人気ですよ』といったアドバイスをされていたそうです。小林はその進め方に大きな違和感を覚えて、大きな箱物にただ人を呼び寄せるようなことはしたくないと思ったみたいで。それよりも、そこを訪れる人たちとの出会いの中で成長して、持続可能な社会のあり方を表現しながら発展していけるような、完成形のない施設を作りたい。そう話していました」

新井さんたち初期のスタッフは、その小林さんのビジョンに共感した。それから、広大な農地を活用して、「FARM」「EAT」「ART」「PLAY&STAY」「NATURE」「ENERGY」の6つのカテゴリーに分かれたコンテンツを展開する、実験的な取り組みをすることになったのだ。

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