ヤフー・LINE「統合」で得る最も価値あるうまみ サービスの連携や統合は本質ではない

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ストーリーとしては、「最大のユーザー基盤」を両社の統合で獲得できる。そうすればアウトプットとして集客、マーケティング、フィンテック、新規事業のどの点についても競争優位が確保できるということです。

ヤフーの利用者数が5000万人で、LINEの日本国内での利用者数は8000万人以上。そこで行われている利用者の活動は、ニュースを読み、ショッピングや旅行、レストランの予約を行い、友達との日常のメッセージのやり取りの大半を交わし、そして日本最大のQRコード決済が行われているわけです。

だとしたら、サービス連携で少しばかり売り上げを増やしたり、サービス統合で少しばかりコストを下げるよりも先に、力を入れてやることがあるのは自明です。それが日本最大規模の顧客ビッグデータの活用です。

たとえグループ内にワイモバイルとLINEモバイルが競合していても構わない。それよりもAIが解析したビッグデータ情報によってUQモバイルや楽天モバイルよりもうまく格安スマホサービスへの乗り換えを察知できれば新しい顧客がワイモバイル、LINEモバイルどちらに流れてもグループ全体は成長できます。

PayPayとLINE Payが共存しても構わない

同様にPayPayとLINE Payが共存していても構わない。最終的に楽天ペイやd払いよりもユーザー数が増えていけばそれで圧倒的な勝ちになります。

両社の親会社であるソフトバンクグループとネイバーグループが今回の経営統合で獲得する武器は、日本における最大規模の顧客ビッグデータです。これにはGAFAと呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンが手にしているビッグデータを上回る潜在価値があります。

しかも日本ではビッグデータで得た情報を企業が外部に販売することについてはものすごく強い消費者の拒否反応がある。そのためGAFAがライバルに情報を提供するということは考えにくい。だからこそ内部利用で最大規模のデータを持つ企業グループになることで、ほかにライバルなどいない怪物に育つことができるのです。

成否はソフトバンクグループが擁する日本最大級のAIエンジニア集団がこの日本最大規模のビッグデータから何を発見していくのかにかかってくるでしょう。今回の両社の経営統合から生まれる真の統合価値は、その一点にこそあるというのが私の見立てです。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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