ヤフー・LINE「統合」で得る最も価値あるうまみ サービスの連携や統合は本質ではない

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要するにサービス連携というものは絵に描いた餅ほどの価値しかありませんし、サービス統合の効果があるというほど両社が同じ事業領域に巨額の固定費を投じているようなものはQRコード決済以外にはほとんどないというのが実情です。

では両社は統合で本当は何を狙おうとしているのでしょうか。両社のオブラートで包んだような発表の細部に注意を払っていくことで、両社が狙っているたったひとつのものが存在することに気がつきます。

今回発表された資料を読むと、両社の統合効果として、「マーケティング事業におけるシナジー」「集客におけるシナジー」「フィンテック事業におけるシナジー」「新規事業/システム開発におけるシナジー」の4つのシナジーを見込んでいることがわかります。

共通する「ユーザー数を武器にしたシナジー」

素直に読めば狙いは4つあると読めますが、一段深く読み取ると「ユーザー数を武器にしたシナジー」という点で4つの狙いは共通します。

それぞれの発表の違いにも注目してみましょう。

ネイバー側は「LINEはフィンテック領域で緊密な連携を構築してキャッシュレス時代の新しい使用経験を提供し、技術を基礎に新規事業に進出して未来の成長のためのシナジーを図るためにZホールディングスとの経営統合を決めた」と明らかにしました。

LINE側の関心はフィンテックと新規事業に力点が置かれていることがわかりますが、これはアウトプットの部分です。

続いてヤフー側は「統合の結果、ZホールディングスはメッセンジャープラットフォームのLINE、ポータルのヤフージャパン、コマースプラットフォームのヤフーショッピングとZOZO、金融サービスのジャパンネットバンクなどを傘下に置き、日本・アジア最大のユーザー基盤を確保することになるだろう」と述べています。

つまり最大のユーザー基盤というインプットが増える点にヤフー側の興味が置かれているということです。

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