「自衛隊法改正」で何が変わるのか?

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明確さに欠ける点が多々ある

 このように改正案では、自衛隊法第3条に第2項を新設し、新たなカテゴリーの「従たる任務」を設け、さらに同項第1号を周辺事態における活動、第2号を国際平和協力活動としています。つまり、今回の改正案においては、従たる任務が、(1)「公共の秩序維持」と(2)「国際平和協力活動等」の2種類となるわけです。

 (1)は「必要に応じ」実施され、(2)は「主たる任務の遂行に支障を生じない限度において」実施されます。しかしながら、この(1)と(2)の相違点はなにか、また、自衛隊としての優劣があるのか、などの点については明確になっていません。

 加えて、国際平和協力が「本来任務」となることにより、予算の枠組み、自衛隊の編成や装備等が変わるのかどうかも明示されていません。また、国際平和協力活動だけでなく「機雷等の除去」や「在外邦人等の輸送」も本来任務する理由もよく説明されていないのです。自衛隊の「機雷等の除去」の任務は、そもそも第二次大戦中に敷設された機雷を除去するためにできた任務です。つまり、その任務はすでに終わっているのです。それを本来任務化するのは、湾岸戦争後に行ったペルシャ湾への掃海艇派遣のような活動が今後増えると想定したからなのかどうかは分かりませんが、大きな論点になることは間違いありません。

 当然、「在外邦人等の輸送」も危険で重要な任務です。ただ、在外邦人輸送が本来任務になり、「国賓等の輸送」や平時・有事を問わず米軍に物品・役務を提供する「ACSA」が「付随的任務」に残された理由も現状では明確になっていません。

 私は自衛隊法の見直し自体には基本的に反対していません。しかしながら、「なぜ、このような任務区分となるか?また、任務の変更にともなう将来の自衛隊のあり方がどうなるか?」といった点を明確にしていく必要があります。

藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。参議院議員。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。著書に『挑戦!20代起業の必勝ルール 』(河出書房新社)など

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