世界は「日本の核武装」をどう見ているのか?
日本の憲法9条はほとんど知られていない
以上が今回の北朝鮮の核実験に伴って再燃してきた海外の主な論調ですが、読者の皆さんはかなり違和感を覚えたのではないでしょうか。まず、2番目の「日本カード」なる考えは日本の核兵器保有を対中国交渉上の道具としてしかみなしていません。また、3番目の保守化の台頭による結果としての核武装という議論も、日本にとっての核武装は他国と同様の位置づけであるとの前提を置いており、日本の理念に対する理解において、内外のギャップが相当あるようです。
今回の海外の論調を通して分かるように、日本が主張する「唯一の被爆国」としての立場は海外にはそれほど浸透していないように感じます。この点は、これまでの日本と外務省のパブリックディプロマシー(広報外交)がいかに弱かったかを象徴する例として、反省すべきだと思います。非核三原則により佐藤元首相がノーベル平和賞を受賞したのは、当時の国際社会において大いに評価に値する理念であったからです。ただし、その崇高な理念が外に発信され、きちんと理解されてきたかというと疑問は残ります。
たとえば、中国最高峰の知識人であるはずの清華大学の教授でさえも、憲法9条のことや日本が攻撃型兵器を持っていないことを知らなかったりします(その教授は、ほとんどの中国人はその事実を全く知らないと言っていました)。また、マイケル・グリーン・CSIS日本部長と話した時も、わが国の憲法9条を理解しているアメリカ人はほとんどいないと指摘されました。
わが国は、「非核三原則」のような理念を浸透させ、自らの発言力を高めることが逆に日本にとっての「カード」となりえるはずです。これには政府のみならず日本のメディアやアカデミズムも合わせて国外への発信を推進していくべきであり、そのための組織や予算制度の充実を図るべきではないでしょうか。
※本記事の執筆にあたり、東京大学大学院博士課程の小池 政就氏に協力していただきました。
藤末健三(ふじすえ・けんぞう)
早稲田大学環境総合研究センター客員教授。清華大学(北京)客員教授。参議院議員。1964年生まれ。86年東京工業大学を卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省、環境基本法案の検討や産業競争力会議の事務局を担当する。94年にはマサチューセッツ工科大、ハーバード大から修士号取得。99年に霞ヶ関を飛び出し、東京大学講師に。東京大学助教授を経て現職。学術博士。プロボクサーライセンスをもつ2女1男の父。著書に『挑戦!20代起業の必勝ルール 』(河出書房新社)など
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