世界は「日本の核武装」をどう見ているのか?
アメリカが本当に恐れていること
一方、核武装発言を聞いた時に、私がすぐに思い出したのは、昨年、米ワシントンにあるCSIS(国際戦略研究センター)で開いた会合のことです。私のブログには書きませんでしたが、ここで北朝鮮の問題を議論していた時に、CSISの研究者は「アメリカは、北朝鮮の核開発を気にしているのではなく、それを理由に日本と韓国が核武装することを懸念している」と言っていました。この会合で私は、「アメリカは日本が軍事的に独立することを恐れている。日本がアメリカに敵対する可能性を捨て切ってはいない」と痛感しました。NPTの崩壊による「核ドミノ」の危険性もありますが、国際社会、特にアメリカは、わが国の軍事強化と軍事的独立を警戒していることは間違いないと考えます。
次に、北朝鮮に核開発疑惑が浮かび上がった際にアメリカのメディアで話題になったのが、日本の核武装化の動きを「中国へプレッシャーを与えるカード」として使えるのではないかという議論です。保守派のチャールズ・クラウトハマー氏がワシントン・ポスト紙で 「Japan Card」というコラムを書いて話題になりました。その中身を要約すると、「中国が北朝鮮に対して誰よりも影響力を保有しながらも、なかなか日米の思惑通り動いてくれないのならば、日本が核武装化の動きを見せることによって中国に自分たちと同じ気持ちを味あわせてやろう」ということになります。ここでは日本の内情やら予想される国際的非難やらは無視して、まさに自分たちの「外交カード」として、日本の核武装を論じています。
最後に、最近は北朝鮮問題だけでなく全体として日本が右傾化してきており、その結果として軍事力の増強を進め、ひいては核兵器の保有にも踏み切るのではないか、という議論もあります。朝鮮日報では今年8月の社説で「日本に核武装の口実を与える」というタイトルで、あたかも日本が武装したがっているというような印象を与えています。近年の日本における保守化の台頭にはアジアはもとより米国も注目しているようで、安倍新政権の見方もそのような観点からの分析が多く、その先に憲法改正や核兵器の保有を選択するという論調で展開されています。