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「がんを告知された人」がその後迎える心境変化 喪失と向き合うには負の感情の役割が大切

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  • 清水 研 精神科医、医学博士
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柳は風に吹かれるとたわんで形を変えますが、風がやむと元に戻ります。それとは逆に、太い樹は一見強いようですが、強い風が吹くとボキッと折れてしまうことがあります。ここに大きなヒントがあるように思います。

病気と向き合う過程ではさまざまな葛藤があり、一筋縄でいくものではないですが、一方で、多くの人は衝撃的な出来事に打ちのめされても、時間とともに柳のように立ち上がってくる力を持っているのです。

苦しみの先にたどり着く新たな世界観

さらに、私が多くの患者さんの病気と向き合う過程を知るにつれて驚いたことは、苦難を経験することで、病気になる前とは異なる、新たな世界観を見つけていかれることです。

心理学の領域では、このことを心的外傷後成長(Posttraumatic Growth : PTG)と言います。

ただ、患者さんご本人は「成長した」という感覚はあまりないようですし、「成長しよう」と思われる人もまずいらっしゃいません。

私が「だいぶ考え方が変わられましたね?」などと申し上げても、「日々悩みながら病気と向き合っているだけです」とおっしゃる人がほとんどです。

心的外傷後成長は、その人があるがままに病気と向き合うプロセスの中で、自然に生じるものなのです。

ですので、病気になって今まさに悩んでおられる方々には、「悲しみを経て成長しなければならない」とは決して思わないようにしていただきたいと思います。無理に前向きになろうとすることは、傷ついている自分にさらに鞭打つようなもので、決してご本人のためにならないと思います。

「苦難との正しい向き合い方」というものはないし、100人の患者さんがいれば100通りの病気との向き合い方があります。

つらい出来事に出合ったとき、悲しみに暮れる気持ち、怒りに震える気持ちも押し込める必要はありません。むしろこれらの負の感情にも重要な意味がありますので、心にふたをしないことが大切です。

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【苦しみながら、心のおもむくままに過ごした先に…】

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