マツダ、販売低迷でも「値引き」に走らない事情 アメリカや中国で苦戦、2期連続の減益見通し

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中期計画発表の場で、藤原副社長は基幹車種「CX-5」を引き合いに出し、平均販売価格が上昇したことを説明した。2012年発売の初代「CX-5」の平均販売価格は約270万円。2代目となる2017年発売の現行「CX-5」は2.5リッターターボの追加や商品改良が効き、約320万円と約50万円上昇した。

環境性能と走行性能を両立させた「スカイアクティブ」技術や野生動物がモチーフの「魂動(こどう)」デザインで商品力が向上し、中古車の下取り価格(残価)も上がった。藤原副社長は「マツダ地獄はなくなった」と自信を示した。

商品価値を訴求した販売への転換

「マツダ地獄」とはかつてのマツダ車販売を巡る悪循環を揶揄した言葉だ。2010年以前はマツダの販売会社は販売台数目標を達成するとマツダ本社からもらえるインセンティブ目当てに、極端な値引きや自ら購入して中古車市場に流す自社登録が常態化していた。この影響で、マツダ車を中古車として売ろうとしても、低い残価しかつかない。結局マツダ車ユーザーはマツダ車にしか乗り換えられず、顧客満足度の低下につながっていた。

マツダの藤原副社長は「質を維持して台数との両立を図っていく」と強調する(記者撮影)

マツダは2012年の初代「CX-5」を皮切りとする新世代商品群の導入にあわせて、「正価販売」に舵を切る。 正価販売とは商品の価値や魅力にあった価格を消費者に納得してもらうことで極力値引きをしない販売手法だ。ここで足元の販売低迷から脱するためにインセンティブを増やしてしまうと、また負のスパイラルに入ってしまう。そんな危機感が経営陣をはじめとして、マツダ社員にはある。藤原副社長は「マツダブランドの確立には非常に高い商品価値と納得感のある価格が重要」としたうえで、「その価値や納得感を顧客に理解してもらうコミュニケーションや販売力が必須」と訴える。

マツダがアメリカの販売改革の手本とするSUBARUは、安全性能などの付加価値にお金を払ってもらえる顧客獲得を進め、そのブランド確立には20年を要した。マツダはアメリカにおいて、販売会社の入れ替えや新型店舗へのリニューアル、販売店の評価基準変更など、台数よりも商品価値を訴求した販売への転換を目指す。

2020年1月に創業100周年を迎えるマツダ。100年後もマツダが存在し続けるために改革をやり切る覚悟が今まさに問われている。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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