マツダ、販売低迷でも「値引き」に走らない事情

アメリカや中国で苦戦、2期連続の減益見通し

アメリカはマツダにとって最重要市場だ。マツダの世界販売台数に占める割合は2割だが、販売価格が高く利幅の大きい大型車の比率が高いため、 「全社の利益の半分近くを稼いでいる」(国内証券アナリスト)とも言われる。とりわけ収益性が高いのが北米専用の大型SUV「CX-9」で、最上級グレードは4万5000ドル(約490万円)を超える。会社の業績を牽引する重責を担うはずのアメリカ販売だが、2019年4~9月期は前年同期比9%減の13.7万台とふるわない。市場全体がほぼ横ばいで推移する中、苦戦している。

誤算があったのは2つの車種だ。マツダのアメリカの最量販車種であるSUV「CX-5」の販売が4月に急落。競合であるトヨタのSUV「RAV4」刷新のあおりを受け、毎月平均1万3000~1万4000台を販売していたCX-5は9600台にまで沈んだ。マツダは4月に5年ぶりに刷新して発売した新型「MAZDA3」に広告を集中投入。それが裏目に出て、本来RAV4との対抗で守るべきCX-5のガードが甘くなったとも言える。

量販価格帯で苦戦するMAZDA3

そんなMAZDA3も高価格帯のグレードや4輪駆動タイプは売れたが、量販価格帯は伸び悩む。セダンタイプは2万1000ドルからに設定され、1万9000ドルからだった旧モデルに比べて1割強値上げした。最新技術や安全装備を採用するのに伴ったコストを上乗せしたのが値上げの理由だ。その上でインセンティブの額は旧モデルより絞る戦略を取った。アメリカでセダン系の人気が落ちている中、実売価格が上がったため、結果として価格に敏感な層が敬遠している。

旧型MAZDA3では、実売価格2万2000ドル以下の量販価格帯が販売台数の6割近くを占めた。新型MAZDA3では同じ価格帯の販売台数は1割程度にとどまり、2万4000~3万ドルが6割を超える。藤原副社長は「MAZDA3のエントリーモデルに対しては価格コンシャス(価格に敏感)な消費者が多い」と話す。

小規模メーカーのマツダはたくさんの車種を取りそろえることはできない。1つのモデルにさまざまなパワートレインやグレードを設定することで、世界中の顧客の使い方や嗜好に対応する戦略を取る。エントリーモデルの価格は極力据え置きつつ、トップモデルの価格帯を引き上げることで、台当たりの収益性を高めていくのがマツダの戦略だ。

MAZDA3には、ガソリン、ディーゼルに加えて、ヨーロッパと日本では「SKYACTIV X」と呼ばれる新型エンジンと新開発の24ボルトマイルドハイブリッドを組み合わせたパワートレインも設定する。ヨーロッパではこの新型パワートレインの受注比率が全体の約6割に上っているという。 日本では9月下旬時点でMAZDA3の販売は計画の135%で推移し、好調だという。

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