大ヒット作に学ぶ、「映像コンテンツ」戦略

企業価値を上げる映像コンテンツ3つのポイント(上)

●無条件に愛する親の存在を再認識させた感動的映像

2011年に放映されたTVCM映像「Silence of Love」はこんなストーリーだった。

聴覚障害を持って生まれた父と、10代の娘。決して裕福とは言えない環境で2人きりで暮らす典型的な核家族の彼ら。娘は父親の聴覚障害についてからかわれ、いじめられることに悩み、「もっと普通の父親が欲しかった」と、ぶつけようのない怒りにあふれながら日々を過ごしている。父は娘の誕生日に、「自分の聴覚障害については申し訳ない。ほかの父親のように普通に話せないけれど、お前のことを心の底から愛しているんだよ」と伝えるはずだった。が、その誕生日に血だらけでお風呂場に倒れている娘を発見する。父親は「家でもおカネでも何でも持っていっていいから、どうか娘を助けてくれ」と懇願し、自らの血を輸血する。

ここで、「完璧な父親はいない。でも、父親はいつも子供のことを完璧に愛しています。あなたを思っている人のことを、ケアするのを忘れないで(Care for those who care for you)」というナレーションが流れている。

かつて大家族社会であったタイが、少子化と核家族化の狭間に置かれている現状を背景としている。伝統的なタイの大家族形態では、年長者や親の面倒を子供が見ることが当たり前とされてきたが、近代においてはその伝統も薄まりつつあり、新たな社会課題となっているようだ。そこで、現在、働き盛りの若い世代に、自分たちのことを無条件に愛してくれる親の存在を、再度、気づかせるためのストーリーを映像として展開した。「より質のよい人生」を約束してくれる保険プランを親にプレゼントしよう、と呼びかけているのである。

以上のように、Thai Life Insuranceは、いずれも自社のサービスで「タイ人みんな、まるごとThai Life Insuranceが面倒を見る」ことにより、社会の大きな課題の解決の一助となろうという姿勢が感じられる。ここに、Thai Life Insuranceという企業が、タイの社会において人々に頼られ、慕われる位置にあるという社会的位置関係、つまり、「タイ人みんなに頼られる存在」としてのブランディングに成功を見ることができる。そして、さらにはタイ社会における意義ある存在として、企業価値を上げることに成功している。

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