メルカリはアントラーズと何を企んでいるのか 親会社の社長が突然子会社の社長になった訳

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2019年のACLでは残念ながら準々決勝で涙をのんだが、アジア王者となった今、目指すは世界の大舞台に立つ「常連チーム」となることだ。

「目指すところはアジアの大会に必ず出場して勝つこと。そして、世界の強豪と戦う。そういったチームにしていかないといけません。その意味では、これまでの25年よりも一段、二段、いろんなギアを上げて、ステップアップしていかないといけないと思っています」

「消滅の危機感」がつねに「新しいことへの挑戦」を生んだ

「どうだ、面白そうだろ?」

鹿島アントラーズの鈴木秀樹取締役マーケティングダイレクターは、いつもウキウキした表情で、自ら描いた次の事業構想について楽しそうに語る。

これまでのアントラーズは、鈴木秀樹取締役を中心にさまざまな事業を展開してきた。茨城県が所有するカシマサッカースタジアムの指定管理者として、スタジアム運営において健康、美容、医療、温浴、芝生の事業を実現。そして2018年には、観光を通じて地域づくりを行う「アントラーズホームタウンDMO」も設立した。

「アントラーズは、何かとハンデが大きい。だからこそ、知恵を絞って考えて、新しいことに挑戦するかが大事なんです」

Jリーグのマーケットは、約1時間で来場できるおよそ30キロ圏内に人口がどれだけいるかが、一つの基準とされる。人口約6.7万人の鹿島町(現・鹿嶋市。スタジアム建設当時)にあるカシマスタジアムは、この30キロ圏内人口が、たった78万人。プロスポーツを興行することはセオリーから大きく反する数字だ。なにせ半分は海に面しているのだから厳しい環境と言わざるをえない。現にFC東京は2200万人を数える。

だからこそ、つねに危機感を持ち、つねに新しいことにチャレンジしてきた。そして今、また新たな挑戦の一歩を踏み出そうとしている。

今回の経緯について、鈴木秀樹は言う。

「先日の会見(7月30日)で日本製鉄は、素材メーカーがソフト事業を支えることに限界があると発表していました。その考えが生まれたことで、今回の譲渡の話が持ち上がり、話が進んでいきました。

またその背景には、この譲渡に至るまでに、アントラーズを立ち上げた住友金属が、合併により違う会社になっていたという点があります。恵まれた親会社ではなかったですが、住友金属からの熱い思いを感じて、ここまできました。住友金属における象徴は、アントラーズ。“ふんだんにお金は出せないけど、頑張ってくれ”“よく勝ったな”という、熱い応援に、僕自身、喜びを感じてきました」

1991年、住友金属蹴球団から鹿島アントラーズになった。1993年にJリーグが開幕し、タイトルを積み重ねてきた。その過程では、「親会社の変化」があったという。

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