トランプ大統領の弾劾調査は新次元へ進んだ

下院弾劾は確実、上院も裁判実施は不可避に

トランプ大統領は10月21日、自身の弾劾に対する戦いを共和党員に呼びかけた(写真:ロイター/LEAH MILLIS)

ウクライナ疑惑をめぐるトランプ大統領の弾劾へ向けた調査は新たな次元に入った。最初の内部告発は氷山の一角にすぎなかったようだ。トランプ政権は弾劾調査への協力を拒否したが、元政府高官に加え現職の政府高官も含めた10人以上が下院で証人となった。政権の方針に反し、報復リスクを承知したうえでの証言だ。特に10月22日のウィリアム・テイラー駐ウクライナ代理大使の証言はトランプ大統領にとって大きなダメージを与えかねないものとなった。

トランプ政権は、2016年大統領選への介入疑惑およびバイデン前副大統領と息子ハンター氏に関わる捜査をウクライナ政府に依頼していたことを、すでに認めている。だが、トランプ政権が国益に反して、軍事支援に対する「クイド・プロ・クオ」(quid pro quo:ラテン語で「見返り」の意味)としてウクライナに要求したのか、これにトランプ氏自身が関与したのかは、これまで不透明だった。

10月22日の証言でテイラー氏は、「見返り」を政権が求めていたこと、そしてトランプ氏がそれを直接指示していたことを示唆し、政界には衝撃が走った。すでに下院での大統領弾劾はほぼ確実視されている。

証言で明らかになった「見返り」としての捜査依頼

アメリカ議会の地下に設けられた機密情報隔離施設(SCIF)では、10月に入って連日、下院議員が長時間をかけて証言の供述を取っている。検察官による取り調べ同様に、SCIFには関係者しか立ち入りが認められない。証言者がメディア報道の影響で発言を変えることを避けるためだ。一般公開にすると議員の質問や追及が有権者へのアピールを狙ったものに偏ってしまうため、これを避ける意味もあるという。

各種証言から2つの問題が浮き彫りとなった。

1つ目はトランプ氏が2020年大統領選で対抗馬となりうるジョー・バイデン前副大統領と息子のハンター・バイデン氏についてウクライナ当局に捜査をするよう要求していたこと。2つ目がトランプ氏のクライドストライク社(本社、アメリカ)をめぐる捜査依頼だ。

クラウドストライクは、民主党全国委員会(DNC)のメールをハッキングしたのはロシアであり、ウクライナであるという説は誤りであると証明した。これはその後、FBI(連邦捜査局)も確認している。しかし、トランプ氏はクラウドストライクのサーバーがウクライナに存在するといった陰謀説を証明しようと、ウクライナ政府に捜査を依頼したというのだ。トランプ氏は、2016年大統領選の勝利はロシアの助けがあったからだという疑いを晴らすことを、狙っていた模様だ。

トランプ政権が、これら2点の捜査を「見返り」として、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領のホワイトハウス公式訪問やすでにアメリカ議会が承認済みの3億9100万ドルの対ウクライナ軍事支援の施行を約束していた疑惑について、テイラー代理大使は認める証言をしている。

なお、2点目のDNCハッキングの捜査に関しては、10月17日のホワイトハウス記者会見でミック・マルバニー大統領首席補佐官代行が、これを条件にウクライナに対する軍事支援の施行を約束していたことを実質認める発言をしている。「見返り」という言葉は使っていないものの、「それはアメリカの外交政策で常にある行為」と語ったのだ。

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