売り切れ必至「バゲット」を作る女性職人の気概 激戦区で生き残る店には理由がある
フランス系ベーカリーと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、バゲットやクロワッサンだろう。ところが、日本ではバゲットが毎日売り切れる店はむしろ珍しい。日本人には柔らかいパンのほうが、ウケがいいからだ。そんなバゲットが売り切れる店が東京・武蔵境にある。
その店、「パサージュ・ア・ニヴォ」は2008年に開業。パンを作っているのは、女性職人の大和祥子氏だ。力仕事が多く長時間労働になりがちだからなのか、パン職人には男性が多い印象がある。筆者がこの4年間行ってきたパン屋取材でも、出会った女性の職人は1人しかいなかった。女性職人が作るバゲットにはどんな魅力があるのだろうか。
武蔵境はチェーン店もあるパン激戦区
「パサージュ・ア・ニヴォ」には、食パンからサンドイッチまで70種類のパンが並ぶ。店長は夫の大和真氏で、このほか厨房に4人、販売に2人が常時アルバイトとして働く。休日は週2日のみ。町のパン屋として、日常使いのパンを地元の人たちに提供している。
武蔵境は、駅前にリトル・マーメイドやドンクなど、多くのパン屋がひしめく激戦区。しかし、取材した日が、大型台風19号が来る直前だったこともあり、パサージュ・ア・ニヴォには人が絶え間なく訪れ、午後2時過ぎには6本残っていたバゲットが完売。菓子パン、総菜パンもほとんどが売り切れてしまった。いざというときのために備えるパン、と町の人が頼りにするパン屋なのだ。
この日は珍しいと前置きしながらも、「バゲットがその日のうちに売り切れることはよくある」と祥子氏は言う。バゲットが完売するのは、同店がハード系パン中心、という特色を打ち出す店だからかもしれない。
あんパンはフランスパンの中にあんを入れ、クリームパンの生地はクロワッサンだ。オープン当初は、柔らかいパンのあんパンも出していたが、あまり売れなかったのでハード系パンにしたという。「お年を召した方でも、バゲットを買ってくださるのが予想外でした」と祥子氏は話す。
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