トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 2年前とは様相が変わってきている

拡大
縮小

6月には、右派のアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所が「共和党員たちは、この世の中における自分たちの立ち位置をよく考える必要がある。ますます多くのアメリカ国民が、格差を是正することに関して、国がもっと大きな役割を担う必要があると考えるようになっている」と、書いている。

同研究所が1月に行った世論調査では、回答者の55%が、貧困は各個人の努力というよりも構造的問題によって形成されていると考えており、この数字は2001年における44%から上昇している。

共和党内での支持率は依然高い

とはいえ、トランプは共和党内ではいまだに常時90%に上る支持率を維持しており、2016年がまさにそうだったように、一般投票では負けても、選挙人団のほうは同氏に優勢に動く可能性がある。共和党の政治家たちはトランプ氏を裏切ることを恐れており、一生懸命声援を送っている。

例えば、トランプが、ソマリアから帰化してアメリカ国民となった議員をはじめとする4人の少数派民族出身の女性議員について、「『国へ帰って』自分の破綻した国をどうにかしろ」と発言し、彼女たちがトランプを非難したときも、ほとんどの共和党員がそうした人種差別的発言に対してトランプを非難することはなかった。

この件の数週間後、カンザス州代表の第2下院選挙区のスティーブ・ワトキンス議員は、トランプのこれまでの発言の数々について意見を求められ、20人強の選挙人の出席したタウンホール後にこう答えている。「彼が人種差別をする人だとは思わない」。

選挙まで余すところあと1年強となったが、多くのことが起こり、民主党が2016年同様にあとひと息のところで負ける可能性もある。しかし今明らかなのは、トランプの権力掌握が日に日に弱まっている様相だということだ。

ジェームズ・シムズ ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

James Simms

1967年生まれ。米紙ウォールストリート・ジャーナル元コラムニスト。日本で幼少期を過ごし、小泉政権の経済政策などを取材。元外国特派員協会会長 。現在フリーランスのジャーナリストとして『フォーブス』誌などに寄稿するほか、テレビコメンテーターも務める。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT