トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 2年前とは様相が変わってきている

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「今回の件は、トランプにとって重大な脅威になるだろう。真摯に対応しないとまずい」と、トランプの側近であり、保守系メディア、ニュースマックスのCEOであるクリス・ラディは話す。「トランプを弾劾すべきという人の数は急激にとは言えないが増え続けており、これは大統領にとってはいい話ではない」

注目すべきは、この1件によってトランプ氏が無所属有権者ならびに、中道共和党有権者の支持を失うかどうかだ。ほかの世論調査同様、モンマス大学の調査でも、弾劾及び解任を支持するアメリカ国民の割合は8月から9月にかけて35%から44%に上昇している。無党派有権者間では30%から41%に増えている。

支持層に広がるトランプへの「不信感」

前回選挙の2016年、トランプ氏はその人気度を上回る得票率を獲得することができた。支持率は38%だったのに対し、一般投票では46%を得票して当選したのだ。

ところが、今年10月に行われたフォックスニュースの有権者調査では、43%がトランプ氏を支持しているものの、民主党のバイデン前副大統領、バーニー・サンダース上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員らと比較した想定票数ではトランプ氏が下回った。

元軍人のジェラルド・エブセンと彼の妻デビーにとっては、健康保険と気候変動問題が重要な問題だ。「健康保険については、(アメリカの65歳以上向け健康保険)メディケアよりは、オバマケア的な観点のバイデンを支持している。2人にとっては、医療保険が誰に投票するか決める材料になる」と、夫妻で、アイオワ州で8月に開かれたウォーレンのキャンペーンイベントに参加していたデビーは話す。

とはいえ、2人の最終ゴールは「トランプを落とすこと」であり、最終的には民主党候補に票を投じる考えだ。

大統領に就任してからほぼ3年、トランプ氏の支持率が50%を超えたことはまだない。これは近年の大統領としては前代未聞だ。

一方で、同氏の不支持率はつねに50%を上回っている。2018年にはそれを示唆するかのように、共和党が下院議席過半数を失った。トランプ氏の行動と敵対意識を高めるような物言いによって、郊外の有権者、とくに大卒の共和党女性有権者、そして無党派有権者投票者たちに愛想を尽かされたからだ。

景気が後退し、中国との貿易戦争が農業や工業の主要地帯に大きな悪影響を及ぼすようになれば、トランプ支持はさらに弱まるものと思われる。こうした地域からの支持がトランプ氏の最大の強みの1つだからだ。9月のワシントン・ポスト/ABCニュースによる世論調査によると、対象となった有権者の59%が2020年は不景気に陥ると考えており、43%がトランプ氏の経済貿易政策によってその可能性が高まると考えている。

実際、トランプ支持層である農家でもトランプ氏に対する「不信感」は広がっている。筆者が8月に生産金額において全米最大の農業地区であるネブラスカ州の第3下院選挙区を訪れた際にも、農業団体幹部が農民たちは中国との貿易戦争や、トウモロコシと大豆を原料とするエタノールのための再生可能燃料令を緩和するといったトランプ氏の政策の一部に憤っていると話していた。

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