テレビ災害報道の限界を超えた台風19号の猛威 あまりに広範囲で多岐にわたる甚大な被害
一方で、NHKと民放がそれぞれに台風情報を伝えたことで、「全局を合わせた情報量」はかなりのものになった。
NHKが荒川の状況を伝えている瞬間、相模川下流エリアの住人は「そんなことより城山ダムの緊急放流の情報をやってほしい」と思ったかもしれない。
そのときに民放のどこかが城山ダムを伝えている可能もある。
「全局横並び」には批判が出ることもあるが、私は「情報選択の多様性」ということで、とくに今回のように、「一局では手に余る」際には視聴者はむしろ複眼的に情報を得られることでメリットは大きかったと思う。
テレビはなぜSNSによる災害情報を活用しなかったか
今回はTwitterなどで河川の増水の画像・動画を投稿していた人も多かった。それによって、自分のエリアの状況を確認していた人もまた多かっただろう。
そして「どうしてTwitterで出ている情報をテレビは流さないの?」という声もあった。
これはテレビ局にとっても悩ましいところなのだが、例えば「ウチの裏の川が氾濫している」という動画が投稿されたとする。
だが、テレビの場合はそれが「本当なのか」を確認しなければならない。
投稿者を疑うわけではないが、本当にその人物が河川の脇に住んでいて、その動画が本当に「現在の、その川」なのかという確証はツイートだけでは判断が難しい。
もちろん日中の動画で、しかも場所が特定しやすい建物などが映り込んでいれば判断はしやすいのだが。実際過去にはTwitterで投稿された災害の映像をテレビ局が(投稿者の許諾を得て)放送したところ、実はその映像は「海外」のものだった、ということもあった。
多くの人がツイートした情報は非常に役立った反面、テレビにとっては「事実かどうかの確認作業」という段取りが必要なので、すぐには使えない事情がある。
とくに今回は台風そのものが巨大だっただけにその「確認作業」に人員を割けなかったということもあるだろう。
ただ、SNSによる災害情報の発信は非常に有効であることも事実である。テレビと補完関係で機能することを前向きに捉えて、各局とも「次」にはうまく活用できることを期待したい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら