部下の指導が「パワハラ」認定される上司の特徴 「指導」と「パワハラ」の境界はかなり曖昧だ

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他方、部下に対する「指導」については、パワハラとの線引きが難しい場合があります。一般に業務おいて上司から部下に対する指導は必要不可欠です。この指導が業務上必要かつ相当であれば問題ないのですが、業務上必要かつ相当な範囲を超える場合にはパワハラに当たります。

指導が業務上必要かつ相当といえるかは、 (1)行為のなされた状況 (2)行為者の意図 (3)その行為の態様 (4)行為者の職務上の地位・年齢 (5)両者のそれまでの関係 (6)当該言動の行われた場所 (7)その言動の反復・継続性 (8)被害者の対応 (9)他者との共謀関係 (10)周囲への影響 などを考慮して判断されると考えられています。

管理職や指導者が注意すべきこと

適正な指導と違法なパワハラの線引きは微妙な場合があり、そのときは上記の(1)~(10)の要素を考慮してケースバイケースに判断せざるをえません。

ただし、パワハラに該当しやすい指導には以下のような特徴があります。とくに上司は指導の際に意識しておくとよいと思われます。

(i)人格やキャリアを否定する言葉を使った指導

「バカ」「アホ」など指導と関係のない人格を否定する発言はパワハラに該当します。「何年この仕事をやっているんだ」「こんなこと新人でもできる」というようなキャリアを否定する発言もパワハラに該当する可能性が高いといえます。

(ii)部下や同僚の前で見せしめのように行う指導

とくに、強い指導(叱責など)の場合には、部下の立場を考えてできる限り部下や同僚の前で行わない配慮が必要です。人前での叱責は、同僚や部下に見られることで自尊心を必要以上に傷つける、見ている周囲にも不快感を与えて就労環境が悪化するという2つの意味で問題があります。メールによる指導で不要なCCをつけて送る行為にも同様の問題があります。

(iii)具体的な問題点の指摘と改善方法の示唆を与えない指導

指導には目的があるはずなので、その目的を達成するために、具体的な問題点の指摘と改善方法の示唆を与えることを意識してください。これを意識しない指導は上司の自己満足であり、業務上の必要性が低く、結果的にパワハラに当たる可能性が高まります。

改善方法はあえて示唆せずに考えさせることもありえ、それ自体が問題というわけではありませんが、指導する側が意識することは必要でしょう。

(iv)長時間の指導

上記(iii)を意識した指導を行い、結果的に指導が長時間にわたることもあるので、長時間の指導が一概にパワハラに当たるわけではありません。しかし、一般的に、指導が長時間であることは(例えば、1~2時間に渡る指導)、必要かつ相当な範囲を超えておりパワハラに該当する可能性が高まります。

本当にそれだけの時間をかけるだけの指導内容であるかを指導する側が自問自答する必要があるでしょう。

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