韓国の若者が「失業に苦しみ続ける」社会的背景 「若者の5人に1人」が実質的な失業者
韓国雇用労働部によると、昨年は若者の新規雇用率が約7%になっており、さらにこの義務を履行した公共機関の割合も8割を超えるなど、保守政権時代の数字(2012年は5割弱)と比べて成果が出ている。
ただ社会全体でみると、実際に雇用が増えたのは社会福祉産業であり、とくに高齢層の雇用拡大が進んでいる。一方で、若者が就職する際の大きな受け皿として製造業があるが、ここでの雇用状況は改善されていない。
今年の失業率は8月まで低下傾向が見られるが、中長期的にみると、今の政策では若者の失業率改善に好影響を与える要因にはならないのではないかと考える。
――その理由は?
公共部門の雇用拡大は財政負担を拡げるため、雇用創出の規模には制約があり、効果も短期的だからだ。また、そうした手法を民間部門に強要することはできず、景気低迷などにより採用拡大が困難な環境にあることを考えると、民間への波及効果は極めて限定的と言わざるをえない。
――非正規職の若者を正社員化することも公約に掲げていた。
現政権が発足した際に文大統領が最初に言及したのがこの分野で、労働政策における重要課題として位置づけられている。
そのため、まず手を付けやすい公共部門において積極的に「正社員化」を進めている。政府資料によると、2019年の転換計画予定者の95%の正社員化(※)が決定している(※非正規労働者の正規労働者転換率、2019年8月末)。
正社員化されても安心できない
ただ、ここでも公共部門では順調に進捗している半面、民間部門では低迷しており、波及効果が限定的だ。韓国雇用労働部によると、全産業における勤続期間1年6カ月以上の契約期間満了者が正社員化された割合は約16%(2018年下半期)と、非常に低く厳しい数字といえる。
さらに正社員化されても課題が残っている。正社員化された労働者の大半は、既存の正社員とは別枠の正社員として採用される。
また、非正規として働いていた企業本体ではなく、新たに設立された子会社での採用になるケースも多い。雇用は安定するが、待遇面などの労働条件では格差が存在する。そのため、「低賃金正社員」「無期雇用非正規職」などと表現して正社員化の現状を批判する者も多い。