アマゾンで偽レビュー作りまくる不届者の正体 投稿者「軽く月10万円ぐらいは稼げますよ」

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「ある日、これからは、僕がアマゾンで買ったことにして、定期的に商品を送らせてもらっていいですか、というメッセージがきたんです。実際にお金を払うことも、レビューも要らないって言うんです。

そこから、月に2回、1回につき10個ほどの商品が送られてきますね。イヤホンやスマホの画面フィルム、携帯のゲームコントローラーなど、要るものと要らないものが交じっていますけれど。その意図ですか? 商品が売れた体裁にして、売上げランキングを上げたい、ということなんでしょうかね。断る理由もないんで受け取っています」

『潜入ルポ amazon帝国』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

私も似たような投稿をフェイスブックで見たことがあった。

発信者の名前は、《Aj Chen》とある。プロフィールには、「一歩ずつ、少しずつ、しっかり歩いていきます」という自己紹介文と、潮州市出身で広州市在住、早稲田大学出身と書いてある。私の経験上、名前も在住地、出身校もウソである場合がほとんどだ。出品者も、レビューアーもほとんど偽名を使う。それで取引が成り立つこと自体、このフェイクレビューの取引のいかがわしさを端的に表している。

「皆さん、いつもお世話になります。住所を教えていただき、アマゾン商品を2-3点(商品価格5000円ぐらい)受け取ってくれる方を募集しています。ご興味あれば、直接にご連絡くださいませ。よろしくお願いします」

出品者の正体は…

実際、フェイクレビューとはどのような文面で書かれているのか。3000円近い値段がする、セラミックファンヒーターについてのフェイクレビューは、

★★★★★ こぢんまりした部屋にジャストフィット
今まで小さな部屋だったので、コタツでしたが、PCなど使用のために、コタツに変わる暖房を考えていたところ、この様な商品に出会いました。わずかなスペースに置けて、思ったより暖かく、小さな部屋にはピッタリで、使い勝手も良いです

とある。この商品には80件以上のレビューがつき、70%以上のレビューが五つ星だった。

2000円台の値段がついた《キーファインダー 探し物発見器》には、こんなレビューがついている。

★★★★★ 簡単に見つかりました!! 車の鍵とかスマホとか細々したものをときどき無くすので、紛失防止の為に買いました。 普段スマホをマナーモードにしたまま無くしてしまうので、他の人に電話をかけてもらって着信音を頼りに探すことも出来なくて困っていたので、非常に探しやすくなって便利です

このキーファインダーには、40件のカスタマーレビューがついていて、五つ星レビューが75%。私が見たときには、忘れ物防止タグの部門で、《Amazon's Choice》のロゴがついていた。いずれの出品者もプロフィールに記された住所はCN、つまり中国であった。(著者注・レビューの文章は、だれが書いたのかを特定されないように若干表現を変えている)

横田 増生 ジャーナリスト

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よこた・ますお / Masuo Yokota

1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズムスクールで修士号を取得。1993年に帰国後、物流業界紙「輸送経済」の記者、編集長を務める。1999年よりフリーランスとして活躍。2017年、『週刊文春』に連載された「ユニクロ潜入一年」で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞(後に単行本化)。近著に『「トランプ信者」潜入一年』。

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