住友生命「健康なほど保険料が安い」保険の成否 発売開始から1年、血圧が低下した加入者も

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こうしたデータがあるからこそ、住友生命は日本でバイタリティを展開することを決断し、金融庁からも認可を取得することができた。住友生命の橋本雅博社長は「歩数と疾病率の相関関係のデータなどは、日本の保険会社にも健康保険組合にもどこにも存在しない。ディスカバリー社との提携によって大きな優位性を手に入れた」と語る。

日本で「バイタリティが成功した」と言い切るには、加入者に継続的に健康増進活動に取り組んでもらう必要がある。そのためには、アクティブチャレンジの内容充実など、プログラムの中身をより魅力あるものにしていくことが欠かせない。現在11社(2020年春から13社)にとどまるパートナー企業について、「スーパーマーケットやドラッグストアなど、より日常生活に密着した業態との提携も検討している」と橋本社長は話す。

保険各社は健康増進型保険の開発を進める

住友生命以外の生保各社も近年、健康増進型保険の開発を進めている。加入時に健康診断書を提出すれば保険料が安くなるシンプルな仕組みから、ウェアラブル端末などを使って保険料を変動させる商品までさまざまだ。

各社がこうした商品の開発を進めるのは、保険加入者の病気や死亡などのリスクが減れば、保険会社の保険金・給付金の支払いも減るからだ。健康な人が増えれば、国の医療費の削減にもつながる。従来型の保険が「リスクに対する備え」であるのに対して、健康増進型保険は病気などの「リスクを減らす」のが特徴だ。

ただ、その実現に向けたハードルは高い。病気のリスクを減らすには、日々の行動や習慣を変える必要があるが、いったん身につけた生活習慣や行動を変えるのは容易ではない。変わったとしても、それを持続させるのはもっと難しい。

健康増進型保険は生保会社にとってリスクもある。将来の保険金や給付金の支払額が減ることを見越して、健康リスクが低いと判断した人の保険料を割り引いているが、加入者の健康増進効果が想定以下だったり、保険契約の獲得が計画を下回れば、保険収支は悪化する。新しいタイプの商品だけにシステム開発や広告宣伝にかかるコストも小さくないはずだ。

ネット上にはバイタリティ愛好家のコミュニティが生まれ、SNSを通じて前向きに健康増進に取り組む様子がうかがえる。加入者から「バイタリティが好き」という声もあがり、「特定の保険商品を指して、『好き』と言われることなど、これまでは考えられなかった」(雨宮氏)というほどだ。

これまで病気やケガ、死亡など、ネガティブなリスクに対して保障を提供するのが中心だった保険会社の役割が変わるのか。健康増進型保険は、従来の保険商品に対するイメージを覆す可能性を秘めている。

高見 和也 東洋経済 記者

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たかみ かずや / Kazuya Takami

大阪府出身。週刊東洋経済編集部を経て現職。2019~20年「週刊東洋経済別冊 生保・損保特集号」編集長。

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