今回の景気基調判断「悪化」からの脱出は困難

雇用指標の悪化は明確な景気後退のサイン

①「景気の波及度=Diffusion」は有効求人倍率の悪化により、下方リスクが増大

「景気の波及度=Diffusion」は、CI一致指数の個別系列に対して「Bry-Boschan法」という方法を用いて作成した指標のトレンドの変化を見て検討される。

具体的には、それぞれの系列のトレンドが拡大しているか縮小しているのかの分類を行い、9つあるCI一致指数の個別系列のうち、拡大している指数の比率を示した「ヒストリカルDI」の変化が判断材料となる。9つすべての個別系列が景気の拡大を示していれば、ヒストリカルDIは100%となり、すべて縮小であれば、0%となる。

景気動向指数研究会では、景気後退局面入りの目安を「ヒストリカルDIが0%近傍まで下降」としている。「HPフィルタ」を用いて個別系列のトレンドを求めて拡大・縮小を分類し、「ヒストリカルDI(暫定版)」を作成すると、足元ではプラスとなっている項目は「投資財出荷指数(除輸送機械)」と「商業販売額(小売業)」のみで、DIは22.2%に低迷している。これまで安定的にプラスとなっていた「有効求人倍率(除学卒)」が縮小に転じたため、ヒストリカルDIが上昇に転じる可能性は低下している。

②「景気の量的な変化=Depth」は景気後退の条件を満たす可能性が上昇

景気動向指数研究会によると、「景気の量的な変化=Depth」の観点から景気が後退局面に入ったとみなせる目安は「CI一致指数が過去の参照すべき後退局面のうち下降が小さかった例と同等以上に下降」とされている。

足元のCI一致指数の変化幅は2018年10月をピークとすればマイナス4.6ポイント(マイナス4.4%)となる(筆者の試算ベース)。すでに1980年以降で低下幅が最も小さかった第10循環(1985年6月〈83.8〉が「山」で、1986年11月〈81.0〉が「谷」)の後退局面のマイナス2.8ポイント(マイナス3.3%)より大きい。

もっとも、直近で景気の「山」の認定が見送られた2014年3月の局面よりは依然として低下幅が小さい。2014年3月のCI一致指数は105.7で、その後2015年3月の99.3まで下落基調が続いた。したがって、2014年3月の「山」(未設定)のピークからの変化幅はマイナス6.4ポイント(マイナス6.1%)である。今回の局面では、この数字を大きく超えて下落すれば景気後退入りと判断されることがほぼ確実視される。足元のCI一致指数の下落によって「景気の量的な変化=Depth」の条件が満たされる可能性はとりあえず高くなっている。

③「景気悪化の期間=Duration」はすでに目安を超えている

景気動向指数研究会は「景気後退の期間が極めて短ければ、景気後退とみなすことは適当ではない」としており、「景気悪化の期間=Duration」に関して景気後退局面入りの目安は「景気の山(谷)が、直前の景気の谷(山)から5カ月以上経過、かつ前の景気循環の山(谷)から15カ月以上経過」としている。

前の景気循環の「谷」は2012年11月であり、十分な期間(15カ月以上)経過している。また、直前の景気の「山」を18年10月とすれば、すでに10カ月経過している。途中で「下げ止まり」の局面を挟んだものの、トータルでは「景気悪化の期間=Duration」の条件は満たされている。

以上を勘案すれば、景気はすでに後退期入りしたとみていいだろう。

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